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令和6年度 全国研修会レポート [テーマ別実践研修]
高等学校芸術科(書道)[高書1]:実施担当 東京学芸大学

研修概要

日程:令和6年9月30日(月)
講師:加藤泰弘(東京学芸大学教授)・永守蒼穹(日展会員)・加藤眞太朗(愛知県立松蔭高等学校教諭)
受講者数:20名(定員 40名)

テーマ

書道教育における「漢字仮名交じりの書」の創作指導の工夫
-作品の構想と表現の工夫の視点-

研修会の内容

プログラム① 永守蒼穹講師による講義と実演
漢字仮名交じり書の制作において、どのように作品を構想し、表現を工夫していくかについて講義を行った。講義にあたっては、高等学校の授業を想定して、本研修での学びがどのように授業に還元できるかを念頭に行っている。
用具・用材の選択、線質、用筆・運筆、全体構成などの表現の工夫について、具体的な作品制作の実演を通して、理解を図るようにした。

高等学校の授業で使用される事が多い、全紙1/3の作品の制作のポイントについて実演を行っている。作品制作後、表現の工夫などについて説明を行い、質疑応答の時間を設定した。
床での大作作品の制作実演も行った。用筆・運筆、墨量の工夫、潤渇などの表現の工夫や、大作作品を制作する上での全体構成の考え方などについて講義も行った。
作品と調和する落款の書き方にも言及した。制作後は、大作作品の表現の工夫について説明と質疑応答を行った。

    

プログラム② 加藤眞太朗講師による講義
現職教員の立場から「高等学校芸術科書道Ⅰ「漢字仮名交じりの書」の創作の実際-指導事項の変遷と現在-」というテーマで講義を行った。現行学習指導要領における「漢字仮名交じりの書」の位置付けを確認し、その指導の困難さや課題を指摘した。また、「指導事項の変遷」を取り上げ、各改訂における教育課程の改善の考え方を踏まえ、「漢字仮名交じりの書」の位置づけの変遷や重点化された指導事項についての解説が行われた。

その後、現行の学習指導要領における「漢字仮名交じりの書」の指導事項の構造、解説に示されている具体的な内容、【共通事項】との関係や、「書に関する見方・考え方」に言及した。また、「漢字仮名交じりの書」の指導における学習評価の考え方について説明が行われた。


後半では、指導の実際と生徒の作品を提示し、具体的な授業の取り組みについて紹介があった。
「漢字仮名交じりの書」の授業における学習過程(言葉の選定、意図に応じた作品の構想、表現の工夫)、実用的な表現と芸術的な表現の取扱い等、具体的な取り組みや課題について解説が行われた。約50分の講義の後、質疑応答の時間を設定し、「漢字仮名交じり書」における古典に基づいた表現の深まり、用具・用材の工夫、表現の技能、書的デザインと書作品の違い等について、活発な意見交換が行われた。

プログラム③ 永守蒼穹講師による講義と実技指導
前半を共通課題、後半を各受講者が準備した自由課題とし、実際の作品制作を通して、線質、字形、構成、余白等の表現の工夫について講義の後、実技指導を実施した。
前半は「夢なき者に成功なし 吉田松陰の言葉」を共通課題とし、各自が作品制作を行い、個別指導が行われた。最初の作品と表現の工夫後の作品を比較して、効果的な表現や課題について、確認を行った。
後半は、各受講生が事前に準備した自由課題の言葉の作品制作に取り組み、永守講師が机間指導を行ったり、前で作例を示したりするなどして、表現を深めるための視点について解説があった。

 

最後に、制作した作品を掲示し、全ての作品について、寸評が行われた。本日の演習を通じた、表現の深まりや今後の改善点について、丁寧な批評が行われた。
本日の制作演習で学んだ、具体的な表現の工夫を、芸術科書道の実際の授業に生かしてほしいという総括があり、テーマ別研修を終了した。

実施スケジュール

時間 内容 研修形態(方法)
9:00~9:30 受付
9:30~10:45 開講式、理論研修(教科・科目別:文化庁教科調査官による発表) 理論研修(講義)
11:00~12:00 テーマ別実践研修(午前の部) 参集(講義)
12:00~13:00 昼食
13:00〜14:00 テーマ別実践研修(午後の部①) 参集(講義)
14:15〜16:30 テーマ別実践研修(午後の部②) 参集(演習)
16:40〜17:00 全体講評(文化庁教科調査官) 参集(講義)
17:00~ アンケートについて説明ののち、研修終了