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令和6年度 全国研修会レポート [テーマ別実践研修]
小学校音楽科[小音2]:実施担当 東京藝術大学

研修概要

日程:令和6年10月3日(木)
講師:石上則子(元東京学芸大学)・深水悠子(東京藝術大学)
受講者数:37名(定員 50名)

テーマ

小学校から中学校の連携を図った音楽科の授業づくり:「声を使った音楽表現」による学びの連続性

研修会の内容

本研修は、講師による「音楽づくり」及び「歌唱」の実践、提案を通じて「声を使った音楽表現」を学び、そして小学校から中学校への連続性・系統性を考慮した授業づくりを探究することを目的に実施された。

研修会では、まず石上則子講師により三宅靖子《朝のあいさつ》を題材にしたさまざまな歌唱法が紹介された。

6小節の短い作品ながら、多数の音楽づくりにつながる具体的なアイディアや要素が提案され、単旋律から複数旋律に段階的に移行し、いくつかのグループに分かれて合唱するなど、模擬的にそれらを受講生が実践した。
例えば《朝のあいさつ》の終止で「おはよう」の挨拶を入れる、隣の人と挨拶し合う、様々な言語の「おはよう」で挨拶するなど、周りの人とコミュニケーションをとる方法が展開された。続いて原曲(F-dur)を(C-durに)移調して歌唱し、またそれぞれ階名で歌唱するなどした。その都度、石上講師より「なぜ移動ドを扱うのか」といった授業展開する際の意義について問いかけがあり、授業との結びつけがなされた。


さらに3つのグループに分かれ、輪唱で歌う、声部の追加、声・言葉の伴奏パートを追加して歌うなどといった音楽の要素が加わり、次第に難度が増す中で、受講生が「いかにきれいにハーモニーを奏でて歌うか」といったように音楽を成立させようと取り組む姿勢が印象的であった。
最後に、いくつかの前奏の「始まり」方と後奏の「終わり」方が紹介され、輪唱(3グループ)しながら、前奏と後奏を追加して合唱した。
ここまでに提示された1、日本語・英語ヴァージョン、2、輪唱・部分合唱・(歌唱)伴奏、3、前奏・後奏、4、強弱・速度等を変化させて取り入れる、という大きく分けて4つのパターンを踏まえて、「《朝のあいさつ》の歌い方を工夫して表現する」ことを課題に6グループによるグループワークが行われた。ここでは各グループにより音楽表現を意識した音楽の構成や音楽づくりが検討された。
1時間の昼休憩を挟み、午後の研修会に移り《朝のあいさつ》の各グループの発表が行われ、15分程度のグループワークにも関わらず、それぞれ音楽的な工夫が見られた。
さらに石上講師により、グループワークの発表に対する評価方法についても逐次助言がなされた。


続いて、「声の表現ってなんだろう?」をテーマに、増野亜子著「声の世界を旅する」を引用して説明がなされた。
石上講師は“学校文化の中で大切にされてきた、「声を合わせて歌う」響きのみならず,個々の特徴的な声や他文化に存在する声の表現にも着目する学習の展開を行うことにより、子供がもつ音楽文化を拡大深化させるとともに、個別最適な学び、Well Beingの学習への示唆ともなり得る”と指摘し、声を使った音楽学習の発展性について説いた。
続く「声・言葉による音楽づくり」では、“たちつてと”を使ったさまざまな歌唱法を提示しながら、受講生が実践をする形で講義が進められた。
まず、受講生37名で“た”の声回しゲームを数回行い、それぞれ「できるだけ速く」「高めの声・低めの声、中くらいの声」など条件をつけて取り組んだ。受講生はそれらの実践を通じて前の人の声を聞く、あるいは呼吸を合わせるなどの方法を学習した。
さらに受講生が“たちつてと”のうち好きな一語を選び、各々一語を言いながら仲間を探すグループ分けする、授業で小学生が周りの人とコミュニケーションを取りながら取り組める方法が紹介された。
続いて“たちつてと”に分かれた5つのグループで、与えられた別々のリズムで“たちつてと”を歌う、図形楽譜に書かれた“たちつてと”を歌う、といったいくつかの歌唱法を実践した。
それらを踏まえて、グループワークで“たちつてと”を使った「音楽づくり」に取り組んだ。
各々研修会で扱った内容を振り返ったのち、リフレクションで普段先生方が授業で感じていること、悩んでいることをグループディスカッションし、代表者が発表して研修会が締め括られた。

実施スケジュール

時間 内容 研修形態(方法)
9:00~9:30 受付
9:30〜9:45 開講式 DVD視聴
9:30~10:45 視学官による理論研修 参集
11:00~12:00 テーマ別実践研修(午前の部)
・三宅靖子《朝のあいさつ》を題材にした歌唱
12:00~13:00 昼食
13:00〜14:00 テーマ別実践研修(午後の部)
・《朝のあいさつ》を題材にした歌唱のグループワーク
・声の表現に関する講義(増野亜子「声の世界を旅する」より)
14:00~14:15 休憩
14:15〜15:30 ・声・言葉による音楽づくり
・音楽づくりへの評価方法
15:30〜16:00 ・リフレクション
16:10~16:40 ・まとめと質疑応答
16:40~17:00 視学官による全体講評