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令和2年度 全国オンライン研修会レポート [テーマ別実践研修]
高等学校芸術科工芸:実施担当 東京藝術大学

研修概要

日程:第1回  令和2年12月3日(木)、第2回  令和3年2月22日(月)
講師:上原利丸(染織研究室教授)、橋本圭也(染織研究室准教授)
朱軼姝(染織研究室非常勤講師)、渡邊五大(美術教育研究室准教授)
受講者数:第1回  13名、第2回  7名(定員 各40名)

テーマ

日本の伝統と文化『友禅染』〜糸目糊を用いた技法を学ぶ〜

 

研修会の内容

本講座は「日本の伝統と文化『友禅染』〜糸目糊を用いた技法を学ぶ〜」をタイトルに、友禅染の特質や美意識を感じ取り、友禅染の伝統と文化について考え、見方や感じ方を深めるとともに技法を学ぶ講座を目標として実施した。
自己紹介を簡単に行い、事前に配送した道具や材料の確認の後、全体の内容を知ってもらうために今回の全行程の説明をした。

 

最初にパワーポイントを使用し、本来の「友禅染」の技法と文化についての講義を行うことで単に体験に終わることのないように、素材のこだわりと各工程の必要性を知り、道具の持つ機能的・形体的な美しさに加え十分に役割を把握した上で、実際の制作体験に移っていった。

各工程で使用する道具や材料の役割を所要時間とともにデモンストレーションを講師が説明を加えながら行い、また今回の技法を初めて体験する大学教員に近くで体験してもらうことで、実際に現場で挙がる疑問や生の声に対してタイムリーに応えられるようにした。
最初は、事前に郵送した古典柄図案から下図を選び、絹の生地の下に図案を置き、青花と呼ばれる水洗いで消える液体(送付前に事前に濃度を調整済み)を使用し面相筆でトレースをした。
次に、テキストの指示で前日から前準備をしてもらった糊筒の調整と使用法を説明し、道具の組み立てと調整を行い試し描き後に青花のラインに沿って糊筒で丁寧に糸目糊を置いていった。

青バナで下書きした線に糸目糊を置いていく作業

 

糸目糊置きの作業が終盤になった頃に、糸目糊の乾燥時間と休憩時間を兼ね乾燥後に彩色の説明と彩色工程を行い、彩色後から仕上げまでの工程も注意点を交えて説明を行った。

 

実際に友禅技法で作品を作っている今回の講師を担当した二人の教員により、パワーポイントで作品の鑑賞を通して多様な展開が存在すことを知ってもらう機会も用意した。

振り返りでは、配信現場で体験していただいた教員をはじめとして各受講者から、忌憚のないご意見をいただいた。また、中学校や高等学校での授業展開も考慮し、制作過程全体を見通して染めの手段を含む制作方法の工夫、また、代用できる道具についても触れた。
実施スケジュールの彩色の工程は事後に行うこともできるため、説明までは必ず行うが企画段階から彩色を仕上げることは困難であると予測していた。「糸目糊」を専用の道具を使って絹の上に置いていくことが、最大の講座のポイントとしており、また予習・復習も可能となるように全ての工程を網羅したテキストも事前に郵送セットに加えておいたので、講座が終了したのち最後の工程まで行った受講者が多くいれば幸いである。

アクリルガッシュで彩色
その後に布を洗い流したところ

 

友禅染や工芸は難しいイメージ、あるいは敷居が高いと感じていたことに対して、身近な素材で代用可能なこと、デザイン・彩色ともに様々な創意工夫ができ、自身の発想を伸びやかに表現できると感じてもらえたことは大きな成果と言える。また高校の授業にロウ染めに変わる新しい染色の技法の一つに加えられることは生徒の染色文化に対する関心も含めて意義あることである。
道具が伝統的なものを使用し、もち米が主要な材料であることは意外であったかもしれないが、観るだけではなく肌で感じることでより多岐にわたる気づきに展開できると思っていただき、工芸で重視している五感を大切に制作することを伝えることができたと感じた。

 

 

実施スケジュール

時間 内容 研修形態(方法)
13:00〜13:10 研修前の操作確認・事務連絡、趣旨説明 リアルタイム
13:10〜13:40 友禅染技法(文化・歴史を含む)についての講義・工程説明 パワーポイント
13:40〜13:55 青花下図トレース リアルタイム
13:55〜14:15 道具の準備・調整    〃
14:10〜15:00 糊置き    〃
14:50〜15:00 乾燥兼休憩    〃
15:00〜15:40 乾燥・彩色    〃
15:40〜16:10 参考作品鑑賞・振り返り    〃