日程:令和2年12月3日(木)
講師:熊谷 晃(秋田公立美術大学)、アシスタント 1名
受講者数:12名(定員 10名)
伝統工芸の漆器(菓子皿)製作体験を通し、作品制作に対する発想や構想に関する資質・能力を醸成し、
完成後に使用することで、生活の中の美を感受する視点を養う
本講座は、伝統工芸の漆器(菓子皿)製作体験を通し、作品制作に対する発想や構想に関する鑑賞・能力を醸成し、完成後に使用することで、生活の中の美を感受する視点を養うことをテーマとした。
まず、パワーポイントで漆器の制作工程や沈金技法の説明、作品の紹介をした。実際に制作した作品を使用する様子も紹介した。次に、沈金刀の使い方を説明した。[下写真]
椿皿(菓子皿)に文様を彫る前に、漆を塗布した板を使用して彫り(点彫り、線彫り)の練習をさせた。今年度はオンラインであったことから、受講者の板をカメラに近づけてもらい、彫り跡を確認しながら指導した。金が入った状態をイメージしてもらうために、漆は塗布せずに金粉だけをすり込ませ、彫りや文様がどのように浮かび上がるのかを体験させた。[下写真]
練習後、椿皿に受講者自身で考えた文様の下図をカーボン紙で転写し、彫る作業へ移らせた。文様については、事前に配付した資料に載っている文様を参考にするか、または独自の文様でもどちらでも良いこととした。画面上に手元が移らないため、適宜受講者に声をかけ、進行状態や彫りの様子を確認しながら指導を行った。
彫りが大体終了したところで、漆の使い方を説明した。皮膚に触れるとかぶれることから、配付した手袋を装着させ、扱いに十分注意することを呼びかけた。たんぽに漆をしみこませ、彫りの凹み部分に刷り込んだ後、ティッシュ等で拭き取るよう指示した。新しいたんぽに金粉をつけて、凹みに埋め込むよう指示した。余分な金粉を拭き取って完成とした。
完成後、一人一人に作品を発表させた。既存の文様を工夫したものからオリジナルの文様を施したものまで、様々な作品が出来上がった[下写真]。完成した作品は、後日実際に使用している様子を撮影し、写真を沈金刀返却の際に同封し送るよう呼びかけた。
制作終了後は質問時間を設けた。美術の授業での応用については、箸などの身近なものに文様を入れる題材や、漆はかぶれる危険があるため、彫り・金粉の刷り込み部分を生徒に、漆の塗布については教員側が行うなどの方法を提案した。また、かぶれないために漆の代用品についても紹介した。
受講アンケートのコメントから、普段学ぶ機会が少ない漆工芸の魅力が伝わったことが分かる。沈金刀を使用した繊細な表現は、見るだけではどのように作られているか分かりづらいため、実際に彫ってみることで理解が深まったのではないだろうか。また、彫った部分に金を埋め込み文様が浮かび上がる喜びを感じてもらえたことで、素材と表現の美しさについても理解が深まったように思われる。
講座中に繰り返し伝えた、「作品を実際に使用すること」については、多くの受講者から感想があった。作品として飾るだけでなく、生活を豊かにする美術の働きに対して、受講者の理解を深められたと思われる。
本講座での学びを、実際に教材へ応用する見通しが立ったことも感想より分かる。最後の質問時間で回答した漆の扱い方なども、教材制作の一助となったようである。
時間 | 内容 | 研修形態(方法) |
13:00〜13:10 | 自己紹介、材料・道具の確認 | リアルタイム |
13:10〜13:20 | 制作工程・技法・作品・使用方法の紹介 | パワーポイント |
13:20〜14:00 | 沈金刀の使い方の練習 | リアルタイム |
14:00〜14:10 | 休憩 | リアルタイム |
14:10〜15:00 | 椿皿に文様彫り | リアルタイム |
15:00〜15:10 | 凹部分に漆のすり込み、拭き取り | リアルタイム |
15:10〜15:30 | 金粉の埋め込み、拭き取り、完成 | リアルタイム |
15:30〜16:00 | 講評、質問受付 | リアルタイム |