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令和3年度 全国オンライン研修会レポート [テーマ別実践研修]
中学校美術科・高等学校芸術科美術:実施担当 東京造形大学

研修概要

日程:第1回  令和3年12月9日(木)、第2回  令和4年2月17日(木)
講師:池上 英洋(東京造形大学)前半
講師:山田 猛、小林 貴史(東京造形大学)後半
受講者数:第1回  30名、第2回  30名(定員 各20名)

テーマ

絵を読むということ
-見方や感じ方を深める手立てと授業づくり-

 

研修会の内容

◯前半90分は、西洋美術史が専門の池上英洋教授による、造形的見方・考え方による、大学教育の内容を中高生への指導者向けにアレンジしたレクチャー及びワークショップを行った。
受講者は、5つのテーマ別レクチャーに対して、講師からの問に対する考えを、チャットや紙に書いたり描いたりしながら画面に提示する方法で進められた。大学の講義を、参加者達が学生の立場で受講する形式であり、教員が生徒の立場を疑似体験する内容であった。

◯後半は、中学と高校に分かれ(教育委員会/特別支援からの参加者は、基本的に自由裁量)、現場の状況や発達段階等を考慮した授業デザインについて、より具体的にグループ内による共有・ディスカッション・授業づくりを60分間行った。
中学校は、山田が「授業改善の要点」のレクチャーを行い、前半の「専門的な見方・読み解き方」と「自分だけの見方を導き出す」主体的・対話的で深い学びの二つの間の振り子の動きや、ジョハリの窓を引用し、絵の作者もわかっていない点を自由な見方で読み取る点についても考えながら、4-5名によるグループ内による共有・ ディスカッション・授業づくりを行った。

◯前半のレクチャーや演習の学びから、グループ別ディスカッション(簡単な自己紹介も含む)の後、学校現場における具体的な手立てと授業づくりのアイデアやヒントを各自で考え、それらをグループ内で共有(紙に書いたメモの提示を)という流れで行った。参加者による主体的で活発な議論や提案が行われた。

 

 

◯高等学校ならびに特別支援学校では、前半の池上教授の活動において絵を読むための視点からの問いに対して、それらを読むための方法として表現活動が取り入れられていたことを確認した。そしてその後、今回の学習指導要領改訂で求められている「主体的・対話的で深い学び」をもとにした学びの質を高める授業改善を試みていくことを課題として、グループごとに学びの質を高める問いの設定と授業実践における具体的な手立てを検討し、共有した。

 

■受講者からの感想(アンケートより抜粋)

○「新たな学びや気付きがあったこと等」について

・絵画のストーリーや伝えたいことを想像するのは楽しいと感じた。ジョハリの窓を例に、作者の知らない部分を見つけていると言われると、生徒も嬉しいし、安心して考えを述べることができると思いました。

・自身で体験したことにより、生徒にとって楽しい学びのある鑑賞活動に工夫を凝らしていきたいと考えるきっかけとなった。

・「問いを持つ」ことの楽しさや、自分自身で生み出す楽しさや喜びを鑑賞でも味わえたこと。

・池上先生が普段なさっているという内容がとにかく素晴らしかった。生徒として「主体的に学ぶ」ことの体験ができた。生徒目線で授業を作ることが大切であると改めて認識した。特にテンポや見せ方など。それだけよく組み立てられた授業なのですね。本当に勉強になりました。

・「○印や×印はなぜ正解、不正解の意味が与えられているのか」など、自分が普段意識していなかったところでも考えを深められるポイントがあると気づいたので、生徒がいろいろなところに「なぜ?」「どうして?」と考えられるよう、発問など工夫していきたいです。

・絵を単に見るのではなく、読むための視点を与える事、表現との組み合わせる事、同じ傾向の複数の作品を見る事、などを実践を基にお話しいただき、今後の授業に生かせる視点をいただいたと感じた。

・識字率が低かった数百年前、絵画は最強のメディアであったということ。

透視図法を簡単に体験実感できること。授業で使います。

・生徒の気持ちになって研修に参加することができ、自分が設定した発問などがどのように生徒に届くのか、またどんな気持ちになるかをイメージするきっかけになった。

・鑑賞と発想、制作との授業展開。生徒とのやり取りの大切さを改めて実感。。発問がしっかりすると,生徒が自身で考えることができる。生活の中に,鑑賞のポイントはたくさんある。

・ただ知識を伝えるのではなく、自由に感想を述べるでもなく、自らが体験することで読み解いていく面白さを実感できた。鑑賞の授業は難しさを感じていたが、問いの工夫で意欲的に意見を交わす子どもの姿がイメージできた。

○「テーマ別研修の講座を受講されて、もっとも印象に残った内容」について

・堅い内容だと思っていた美術史が,見方を変えると伝えやすいこと。そして自身が思った以上に美術史の深い面白さを知らなかったこと。

・絵画を読む視点は、項目だけ見るととても難しいような内容でしたが、生徒が自ら考えられる問いかけの工夫がとても印象深いです。

・生徒には1点透視図法より平行投影図法のほうがなじみが少ないというお話を伺い、確かにそうかもしれないと感じた。平行投影図法で学校生活をお題に縮尺を合わせてイラストを描かせ、それをつないで絵巻風展示をしてみたいと考えた。

・チャットによる会話をしながらの受講体験は参加している実感がありとても有意義でした。

・様々な視点を与えていただき、鑑賞教育の幅が広がった。グループ内でそれぞれの学校に合わせて、どのような実践を展開していきたいかを交流することができ、刺激になった。

・苦手意識を持つ生徒が楽しめるような、造形的な視点が増えるような授業のために自分も様々な視点から物事を考えないといけないと学びました。

・受講前は学習指導要領の解説のみでは咀嚼が難しいのではと思っていましたが、実際には分かりやすく、知的好奇心を喚起する分化会と合わせて双方が胸に落ちた思いです。大変有難い機会をいただき感謝します。

 

 

実施スケジュール

時間 内容 研修形態(方法)
13:00〜13:05 研修前の操作確認・オリエンテーション 全体で受講
13:05〜13:15 前半1 レクチャーと演習1 「伝達手段としての美術の機能」 全体で受講
13:15〜13:55 前半2 レクチャーと演習2 「擬人像」 全体で受講
13:55〜14:15 前半3 レクチャーと演習3 「アレゴリー」 小休止(5分) 全体で受講
14:20〜14:50 前半4 レクチャーと演習4 「遠近法 比較文化」 全体で受講
14:50〜15:00 前半5 レクチャー 「様式」 全体で受講
15:00〜15:05 校種別に移動 小休止(5分) 中高別に移動
15:10〜15:20 後半1 レクチャー 「授業改善の要点」 中高別に移動
15:20〜15:55 後半2 演習5 グループ内による共有・ディスカッション・授業づくり グループワーク+個人授業
15:55〜16:00 後半3 まとめ 中高別で終了
16:00〜16:10 休憩・準備
16:10〜16:30 全体講評 オンライン