日程:令和4年12月15日(木)
講師:大森 啓(金沢美術工芸大学)、桑村佐和子(金沢美術工芸大学)
受講者数:4名(定員20名)
平面なのに立体?:
パズルで考える
1. 講義①:「『絵』の不思議な世界」
今回の演習(立体感の表現を利用した「平面の立体パズル」の制作)への導入。先史時代の洞窟壁画から現代の3Dアートまで、絵画が常に示してきた「そこに無いものを存在させる不思議さや、それを見る喜び」の諸相を振り返った。
今回の演習が「イリュージョン」という絵画の根源的な特性に関わるものであることと、教える側が常に「驚き」「感動」「喜び」を持つことの大切さを伝えた。
2. 講義②:「平面の立体パズル」の説明
立方体の積み木8個を組み合わせた立体パズル(2×2×2)を想定する。個々の立方体を等角投影図法でケント紙に描きバラバラに切り離すことで、平面でありながらあたかも実際の立方体を様々に組み合わせるようなパズル遊びが可能になる。
スライドを用いてアイデアスケッチ・試し描きから本制作までの流れ、色鉛筆で彩色する際の注意点、立体感を出すためのコツなどをレクチャーした。また完成後には、実際の授業で取り組む場合にどのような展開の可能性があるかを考えてほしいと伝え、制作に入った。
3. 演習:パズル制作
参加者はそれぞれ直ぐに制作に取り掛かった。もともと今回の課題自体には個人的なアイデアや感覚が入り込む余地が少なく、簡単な計画立案の後は作業的に進むため気軽に制作に入っていけたようである。
それでも彩色の段階になると、各自のセンスやこだわり、新たなアイデアが加わり、充分に個性的な作品が出来上がっていった。更に8個という条件を超えて制作を続ける人や立方体に溝や穴を描き加える人なども現れ、自発的な展開を生みやすい課題であることが見てとれた。
4. 鑑賞・発表
予定よりも長くなった制作の後、各自の机の上に作品を配置し順番に自作について説明をしてもらった。当初は「作品説明」と「授業への展開」を分けて考えていたが、発表者が作品説明の中で授業への展開も含めて話してくれたので「鑑賞」と「展開」をセットにした発表となった。生徒を思い浮かべた実践的な展開につなげやすい課題であったと考えられる。
具体的には、パズルを動かす様子をコマ撮りしてアニメーションにするアイデアや、背景(パズルを置く台)にも影を描くことで一層3D感が増す例などが示された。
ここで事前に参考作品を作ってくれた学生の作例も披露された。立方体に「ケーキの一部分」という具体的な意味を付与(描写)することで組み立てる喜びが増す事例や、積み木を建築ユニットと捉えてゲーム感覚で建築を行う事例などが紹介され、参加者の興味を惹いていた。
5.全体の振り返り
参加者からは、改めて絵画表現の不思議さや面白さを思い出せたことや、今回の課題を自分の授業でも試してみたいといった感想が寄せられた。
講師からは、参加者が終始、驚きや喜びを持って主体的に取り組んでくれたことに対して感謝が述べられ、今後の授業においてもその感覚(驚きや喜び)を生徒たちに伝えていってほしい旨を付け加えて終了した。
時間 | 内容 | 研修形態(方法) |
9:30〜11:45 | 開講式、全体研修、理論研修(教科別:文化庁による進行) | オンライン |
13:00〜13:30 | 講義①:「『絵』の不思議な世界」 | 参集 |
13:30〜13:50 | 講義②:「平面の立体パズル」の説明 | 参集 |
13:50〜15:20 | 演習:パズル制作 | 参集 |
15:20〜15:50 | 鑑賞・発表 | 参集 |
15:50〜16:00 | 全体の振り返り | 参集 |
16:20~16:40 | 全体講評(教科別:文化庁による進行) | オンライン |