日程:令和6年2月16日(金)
講師:岩井智宏(桐蔭学園小学校)、市川 恵(東京藝術大学)
受講者数:45名(定員 50名)
音楽科における「個別最適な学び」と「協働的な学び」の
一体的な充実
学習指導要領に基づいた児童生徒の資質・能力の育成に向けて,ICTを最大限活用し,これまで以上に「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実させ,「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善につなげることが求められている。そこで本研修では,講師による具体的な実践提案を体験することを通して,「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を視点とした音楽科授業のあり方を探究するとともに,学習改善,指導改善に結びつく視点や方法を学ぶことを目的として実施された。
「個別最適な学び」と「協働的な学び」を考える
岩井講師より、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を授業において具体的に実現していくためのポイントとして、次の3点が語られた。
1.子どもたちの資質・能力(知識・技能、思考力・判断力・表現力等)を育成するために、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の場面や環境を適切に設定すること。
2.「個別最適な学び」とは、多様な子どもたちを誰一人取りこぼさず育成すること。
3.「協働的な学び」とは、子どもたちの多様な個性を最大限育成し、共鳴すること。それが子どもたちの社会性を育むことに繋がっていくこと。
作品ベースから資質・能力ベースの授業構成へ
本研修では、さまざまな実践提案がなされたが、そのうちの一部を紹介する。
「ドレミであそぼう」という題材のもと、〈かっこう〉や〈ドレミの歌〉を教材とした実践提案がなされた。まず、〈ドレミの歌〉を歌って、歌詞の特徴を掴んだ後、ドレミの名前が出てきたら挙手をしたり、2人組をつくって音の高さを手で表したりしながら、身体をとおして音高を感じる活動が行われた。
そして、この導入を生かして〈かっこう〉を歌唱した。その際、「なぜ、『しずかに』という歌詞は低く歌ったの?」、「なぜ、『しずかにー』の『にー』はのばしていたの?」等、教師の言葉がけによって自然と音符の高さや長さに着目しながら歌唱していった。また、2人組をつくり、音の高さと長さを身体で表現しながら歌うことによって、音をのばす際の息遣いが変わったり、音の高さと共に自然とクレッシェンドが加わったりと、曲の表現が深まっていた。最後にドレミで歌った。
岩井講師の実際の授業において、子どもたちが考えた表現の工夫について提示されると同時に、クラス全体に個の考えを共有するためのICTの活用方法についても紹介された。
最後に、上記の歌唱活動を生かして、鍵盤ハーモニカで演奏をした。楽器については、鈴木楽器様よりメロディオンをお借りした。鍵盤ハーモニカの演奏技術に関しては、個人差も大きいため、個のペースに応じた学習環境を設定し、それを自分で選択できることの重要性が述べられた。
このように、〔共通事項〕を橋渡しとしながら教材同士を繋ぎ、活動を広げていくような授業構成を提案した。また、教室の仲間は「学びの友達」であるという、互いを認め合い、教え合える教室の風土づくりが、協働的な学びの基盤となることが語られた。
グループディスカッションと講師への質問
「本日の講義や実践提案を踏まえて,自分の授業にどのように生かしていきたいですか」という問いをもとに意見交換を行なった。また、講師への質問コーナーでは、受講生より「一斉活動の多い音楽授業において、個を見取る際に心掛けていることは何か」、「コロナ禍を経て、歌うことに抵抗のある子ども、音の取れない子どもが多いことに課題を感じているが、どのような工夫が必要か」、「表情豊かに歌うための手立てとは」、「鍵盤ハーモニカやリコーダーの運指に苦手意識を持っている子どもへどのようにアプローチしたらよいか」等の質問が挙げられ、岩井講師よりご自身のご経験をもとに丁寧な回答がなされた。
時間 | 内容 | 研修形態(方法) |
9:00~9:30 | 受付 | |
9:30~10:45 | 開講式・理論研修 | 参集 / 動画視聴 |
10:45~11:00 | 休憩・会場移動 | |
11:00~12:00 | テーマ別実践研修(午前の部) | 参集 |
12:00~13:00 | 昼食 | |
13:00〜15:00 | テーマ別実践研修(午後の部) | 参集 |
15:00~15:15 | 休憩 | |
15:15~15:30 | リフレクション | 個人作業 |
15:30~16:10 | グループディスカッション | グループワーク |
16:10~16:40 | まとめと質疑応答 | |
16:40~17:00 | 調査官による全体講評 | |
17:00 | アンケート提出後,研修終了 |