日程:令和6年12月13日(金)
講師:合津正之助(常葉大学)
受講者数:10名(定員 30名)
「造形的な見方・考え方」を働かせて、見て考える鑑賞活動とICT機器を活用して描く表現活動
【テーマ】
「造形的な見方・考え方」を働かせて,見て考える鑑賞活動とICT機器を活用して描く表現活動
【概要】
絵画解釈(図像学)による鑑賞活動へのアプローチを試みることにより,多様な視点として造形を豊かに捉えるたり,造形を基に考えたりするための造形的な視点について理解するとともに確認した。
また,学び意義としての「どのような視点で物事を捉え,どのような考え方で思考していくのか」という教科を存在意義の中核をなす「造形的な見方・考え方」を働かせられるような学習活動とその指導方法等について考え,美術科の「深い学び」の実現を目指す研修を行った。
さらに,無料描画作成アプリとノートPC(タブレットの代用)を活用して絵を描くことを通して,造形を豊かに捉える多様な視点で,形や色彩,材料や光などの造形要素に着目し,その働きを捉えたり,全体に着目して造形的な特徴などからイメージを捉えたりすることなどについて「絵に表す」活動を考えるとともに実践する試みを行った。
主体的に美術の学習に取り組む態度や美術の創造活動の喜び,形や色彩などによるコミュニケーションを通して生活や社会と主体的に係わること,美術文化の継承と創造に向かう態度,豊かな感性や情操などに関するものを形成する学習活動を「絵に表す(表現)活動」と,そこから生み出された個々の作品を鑑賞すること(鑑賞)で体験的に学び,自分なりの意味や価値をつくり出し(造形的な見方・考え方),対象や事象を豊かに捉えて,美術に係わる資質・能力を創造的に育成することへつなげる。
【学習指導要領との関連】
「中学校美術科:A表現(1)ア(ア),(2)ア(ア)(イ),B鑑賞(1)ア(ア),〔共通事項〕(1)ア イ」
「高等学校芸術科(美術Ⅰ):A表現(1)ア(ア)(イ) イ(イ),B鑑賞(1)ア(ア),〔共通事項〕(1)ア イ」 以上の項目と係わる内容として研修を実施することができた。
【実施内容】
◆「見て考える鑑賞活動」
・絵画を解釈すること(図像学)について,ギリシャ神話と旧約,新約聖書それぞれをテーマにした絵画(ルーベンス,ミケランジェロ,フラ・アンジェリコ,エル・グレコなどの作品)を通して解説を行った。
特にボティッチェリ作『ラ・プリマベーラ(春)』の図像解釈とその説明を通して,その基礎的な事柄を学び,提案する鑑賞活動の概要を事例と共に説明,解説し理解する活動を行った。
(図2. 以下,研修用提示資料一部)
・ゴッホの作品群から特長的であり,提案する学習活動の鑑賞教材として適切と判断した『夜のカフェテラス』を教材として扱いながら,彼の心情や意図,創造的な工夫などについて考えたり,美術の働きや美術文化について考えたりするなどして,見方や感じ方を広げ深める学習活動を行った。
その際,学習の指導方法や留意する点などについても解説し,その充実を図ると共に自分なりの意味や価値をつくりだす活動を提案し,受講者それぞれの校種や学年等の状況,立場によって学習活動の理解を促した。
・提案した授業内容は,鑑賞する技能と図像学に基づき知識と思考により判断し,自分の価値観や意見を表現する資質・能力,態度と人間性を培う,自由な発想と想像力で学ぶ鑑賞活動であった。
また,資料の配布とともにICT 機器を活用して行う鑑賞学習としても説明をし,実践的な授業としての提案を行った。
◆「ICT 機器を活用して描く表現活動」
・無料デジタルペインティング・描画アプリ「Adobe・Fresco」について,PC やタブレットにインストールする段階から解説した。
アカウント等の問題からインストールは行わず,施設のセキュリティと管理の関係から,今回は既に使用できる「Adobe・illustration」を代用して実施することになった。
そのため両方のアプリに共通するインターフェイスにおける,メニューバーやコントロールパネル,ツールパネル等について演習を伴う説明を行った。
また,アプリ(Fresco)の特徴と教育的効果,簡単な操作方法や指導上留意する点などを簡単な例を実際に扱いながら理解を深めた。
・提案する学習活動として,浮世絵の葛飾北斎 作『富嶽三十六景 神奈川沖浪裏』をアプリ(Fresco)により描くことで, 浮世絵の制作過程や美術文化を学びながら,機器およびアプリの操作や基本的な描き方を学ぶ研修を行った。
このアプリは,水彩画風と油彩画風を選択して描くことができるが,今回の研修では,中学校美術科は水彩画風,高等学校芸術科(美術)は油彩画風を推奨したが,より浮世絵風に表現するために水(水彩画風)やオイル(油彩画風)の量を加減しながらの作成をすすめた。
(個人の好み,係わる校種,教科の実態等により選択した。)
【総括】
・造形的な視点について理解するとともに創意工夫しながらICT 機器を活用し,意図に応じた表現方法を工夫して表す学習活動を学び,その指導をすることができる資質・能力を培うことができた。
・指導の個別化と学習の個性化といった個に応じた指導を鑑賞学習とICT 環境の活用し,学習活動の質を向上させる高めるための「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善について考え学ぶことができた研修であった。
時間 | 内容 | 研修形態(方法) |
9:00~9:30 | 受付および各会場へ集合 | |
9:30~10:40 | 開講式、理論研修 | |
10:40~11:00 | 会場移動・準備 | |
11:00~12:00 | テーマ別実践研修 「見て考える鑑賞活動 ①」(1) | 対面 |
12:00~13:00 | 昼食・休憩 | |
13:00〜14:00 | テーマ別実践研修 「見て考える鑑賞活動 (2) | 対面 |
14:00~14:15 | 休憩および準備 | |
14:15~15:30 | テーマ別実践研修 「ICT機器を活用して描く表現活動 ③」 | 対面 |
15:30~15:40 | 休憩 | |
15:40~16:30 | テーマ別実践研修 「ICT機器を活用して描く表現活動 ④」 | 対面 参集および作業 |
16:30~17:00 | 質疑応答・参加者等情報交換 研修修了 |