日程:令和元年12月26日(木)
会場:宇土市民会館
講師:臼井 学(文化庁教科調査官)、福田栄香(生田流箏曲)、(他アシスタント 4名)
受講者数:47名(定員50名)
小学校音楽科・中学校音楽科・高等学校芸術科(音楽)教員等を対象として行われた九州・沖縄地区ブロック研修会は、講師に生田流箏曲の福田栄香氏、文化庁教科調査官の臼井学氏を迎え、3県2市の教諭・指導主事 合計47名が参加し実施された。
本研修は、生田流箏曲の実技を学ぶ実技研修と、実技研修で学んだことを授業に生かす視点と方法について考える実践研修から構成された。
福田栄香氏による実技研修は、前半を「箏の仕組みと基本奏法」、後半を「口唱歌を含む応用奏法を用いた曲の演奏」をテーマとして行われた。
「箏の仕組みと基本奏法」では、箏の各部分の名称とその由来等の理論的な事柄に加え、柱の持ち方や立て方、調弦の方法、爪の運びと手の動き等、箏曲の演奏における基礎・基本の内容が取り上げられた。特に、福田氏からは、演奏時の姿勢や手の位置、爪の当たる角度や次の音へスムーズに移行するためのコツなどが具体的に示され、受講生は福田氏の演奏を模倣する形で実際に箏を演奏しながら学んだ。
「口唱歌を含む応用奏法を用いた曲の演奏」では、《さくら》、《かごめ》等の楽曲を、口唱歌による弾き歌いで練習した。受講者である教員の多くが口唱歌に対し難しさや馴染みのなさを感じていたようだが、「口唱歌を歌うことで“自然と”楽器の音色や響きのニュアンスを捉えることができる」ことが福田氏によって提示され、実際に受講生からも「口唱歌を歌うと弾きやすくなった」、「箏がより音楽的で魅力的になるものが口唱歌であることに初めて気づけた」などの声がきかれた。曲の演奏では、平調子だけでなく、調弦を変え、替え手や他声部等を加えた合奏も行われた。最後に、講師とアシスタントによる模範演奏を鑑賞した。
研修の中では、調弦の中に生きる演奏家の音の個性の話や、箏曲演奏におけるフレージングの話なども取り上げられた。これらの内容は、受講生にとって、プロの演奏家の視点に触れ、日本の伝統音楽
の奥深さや面白さを実感する体験になったに違いない。「知識・技能の面だけでなく、日本の音楽を子供たちに感じさせる方法、伝統の雰囲気といったものを教えていただいたことも大変良かった」という声が受講生からきかれたように、音や音楽をそのニュアンスごと捉えることのできる研修であった。
実践研修では、「実技研修で学んだことを授業に生かす視点と方法を考える」をテーマに、グループによる協議が行われた。協議後の発表では、各学校の現状や取り組みの実際が紹介された他、口唱歌の活用と授業展開に関するアイディア等が提示された。最後に、研修の総括として臼井調査官による講評が行われ、研修の振り返りのほか、「本日の研修を通して教師自身が学び、経験したことを子どもたちの学習過程にどのように組み入れるのかが重要」というお話がなされた。
和楽器を授業でどのように扱うのか、その質が求められるこれからの授業において、プロの演奏家からその音楽の本質を学ぶこと、そして、教師自身がその音楽に魅せられる体験をすることの必要性を実感した研修会であった。
時 間 | 内 容 | 研修形態(方法) |
9:30〜10:00 | 受付 | |
10:00〜12:00 | 【実技研修】箏の仕組みと基本奏法 | 実技・講義 |
12:00〜13:00 | 昼食・休憩 | |
13:00〜15:00 | 【実技研修】口唱歌を含む応用奏法を用いた曲の演奏 | 講義 |
15:00〜15:15 | 小休憩 | |
15:15〜16:25 | 【実践研修】授業に生かす視点と方法を考える ・グループによる協議と発表 ・臼井調査官による講評 |
討議・講評 |
16:25〜16:30 | アンケート記入 |