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令和3年度 全国オンライン研修会レポート [テーマ別実践研修]
中学校音楽科・高等学校芸術科音楽:実施担当 東京藝術大学

研修概要

日程:令和3年12月9日(木)
講師:吉澤 実(リコーダー奏者)
アシスタント:深井 愛記音(東京藝術大学大学院博士後期課程)
受講者数:41名(定員 40名)

テーマ

リコーダーの教育的特性と指導法
-リコーダーについてより深く知り、実技体験を通して指導法を探究する-

 

研修会の内容

本研修では、リコーダーについての理解を深め、その教育的特性を確認し、豊かな表現へと結びつけるための奏法と創意工夫への可能性についての提案・実践を行なった。講師には、長年第一線で活躍されているリコーダー奏者を迎え、講師の生演奏や具体的な実践を通して、表現・創意工夫につながる指導法と奏法について学ぶ内容とした。
研修は、理論的な内容を学ぶ研修(1)と、演奏法と表現について考える研修(2,3)から構成された。

 

研修(1) 楽器についての理解を深め、リコーダーの教育的特性について考える

吉澤氏による様々な楽曲の演奏を交えて、リコーダーの歴史的背景やその教育的特性について解説がなされた。吉澤氏は、豊富な歴史的資料や多様な楽器を用いて、リコーダーの歴史的変遷とその特徴について語り、長きに渡ってリコーダーが人々に愛され、形を変えながら現在も親しまれている理由の一つとして「人の息で演奏することの魅力」があることについて述べた。
また、リコーダーの教育的特性ついて、容易に音が出せることで、早期に完成度の高い音楽体験ができること、歌唱法との共通点により、言葉の力を借りた表現の工夫が可能であることを述べた。さらに、リコーダーはアンサンブルが可能であること、豊富なレパートリーを持ち生涯にわたって楽しむことのできる楽器であることを踏まえた上で、教育教材としての多様な要素(エレメント)を持っていると語り、リコーダーを通して様々な興味の扉が開かれ、より豊かな音楽体験につながることが解説された。

 

研修(2) リコーダーの演奏法:豊かな表現につながる奏法と指導法を学ぶ

吉澤氏の教材をもとに受講者自身が演奏実践に取り組んだ。吉澤氏とアシスタントによる実践のやりとりの中で、リコーダーの正しい扱い方や身体の使い方、チューニングなどの基礎的な内容の確認に加え、音楽表現につながる様々な奏法について実践がなされた。

吉澤氏は、楽器を吹く際には「ハミングするときの身体の状態」を作り、音を身体全体(口腔、鼻腔、咽頭、胸腔等)に共鳴させることで、自然と響きのある音作りができると述べた。自分の身体と息によって「自分だけの音」「世界に一つだけの音」を見つけていくことについての重要性が語られた。

また、基本的な保持や運指に関して、「押さえる」や「塞ぐ」という力みに繋がりやすい声かけではなく、指を指孔にそっと触れて、「閉じる」という言葉の使用についても説明がなされた。

タンギングに関しては基本的なシラブルである「tu」から始まり、スタッカートやポルタート等の奏法に展開され、教材の曲を用いて実践がなされた。チューニングに関しても実演を交えながら、音を聴き、管の長さを適宜調整すること、「心で音を見る」ことについても説明がなされた。さらに拍子や旋律の捉え方についても具体的な説明を交えながらカノンや2重奏を中心に実践が重ねられた。

 

研修(3) リコーダーの演奏法と表現:楽曲に応じた創意工夫を考える

楽曲をどのように創意工夫し演奏するかについて引き続き実践がなされた。言葉の抑揚と拍子感を結びつけ、歌唱と共通させた表現に取り組んだ。
吉澤氏は、息が直接演奏に影響することについて触れ、同じ音量でも強弱だけでなく音の「長さ」も重要であること、それゆえアーティキュレーションを工夫することが重要であることについて述べた。さらに、同じ言葉でも喜怒哀楽によって表現が変化すると同様、音に表現を加えることの重要性を強調した。
また、高音と低音の出し方についてそれぞれ「冷たい息」「暖かい息」と表現し、特に高音の出し方については過度に息を吹き込むのではなく「裏声を出すように」と自然な身体の使い方を促す指導がなされた。さらにサミングについても親指の使い方に関して具体的な指導がなされた。以上で学んだ演奏法を、歌詞や拍子、曲調との関係を踏まえて表現に生かした。

 

まとめ

最後に、授業で生かせる工夫や方法について質疑応答の時間を設けた。
寄せられた質問に対し、具体的なアイデアや授業で生かせる視点について紹介された。

 

■受講者からの感想(アンケートより抜粋)

・リコーダーの歴史やそれに伴った数々の種類の楽器紹介と演奏、リコーダーの基礎と表現方法について学べた。特に息の流れ、響かせ方の指導は、あの数分で音が変わったので、驚いている。

・リコーダーは技能を高めるという所に力を入れて指導しがちだが、そうではなくて子どもがどのように演奏したいと思っているかという思いの部分を評価してあげることが大切だということが印象に残った。

・息という字は、「自」分の「心」と書くという話から、管楽器を奏する際重要となる呼吸そのものに、意識を向けることの大切さを再認識した。

・最も大切なことは生活や社会の中の音や音楽と主体的に関わっていくことのできる児童を育てることだと気づかせて頂いた。子どもたちが将来も音楽を愛好することができるような指導に努めたい。

・豊かな感性を育てるために、自分の中に音楽の意味や価値を見出すことが大事だということがとても印象に残った。

 

 

実施スケジュール

時間 内容 研修形態(方法)
13:00〜13:10 研修前の操作確認・オリエンテーション リアルタイム
13:10〜14:10 楽器についての理解を深め、

リコーダーの教育的特性について考える(研修1)

リアルタイム
14:10〜14:20 休憩
14:20〜15:00 リコーダーの演奏法:

豊かな表現につながる奏法と指導法を学ぶ(研修2)­

リアルタイム
15:00〜15:15 休憩
15:15〜15:50 リコーダーの演奏法と表現:

楽曲に応じた創意工夫を考える(研修3)

リアルタイム
15:50〜16:00 質疑応答 リアルタイム
16:00〜16:10 休憩
16:10〜16:30 全体講評 リアルタイム