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令和3年度 全国オンライン研修会レポート [テーマ別実践研修]
中学校音楽科・高等学校芸術科音楽:実施担当 東京藝術大学

研修概要

日程:令和4年2月17日(木)
講師:加藤 昌則(作曲家)、佐野 靖(東京藝術大学音楽学部教授)
受講者数:75名(定員 50名)

テーマ

学びを深める鑑賞の指導法を探究する
-曲想と音楽の構造との関わりについて様々な視点から理解を深め「聴き方」について考える-

 

研修会の内容

本研修は、第一線で活躍する作曲家 加藤昌則氏を講師に迎え、作曲家の目線から多角的に作品をとらえ、作品の本質や魅力に迫ることを通して、授業の工夫と改善に結びつく視点と方法を考察することを目的に実施された。
研修に先立ち収録・編集した演奏・解説の動画を視聴しながら、受講者は質問をリアルタイムにチャットへ書き込み、その質問を受けて加藤氏がコメント・補足を加えていく形で研修が進められた。

 

〇 研修1 作品を聴く視点にについて
-『G線上のアリア』、『魔笛』を例に

バッハの『G線上のアリア』及びモーツァルトの『魔笛』序曲を例に、作品の面白さに迫る視点や切り口が紹介・提案された。はじめに取り上げられた『G線上のアリア』では、「対位法」の技法に着目し、複数の旋律によって音楽が紡がれ、音楽が立体的に構築されていく面白さが解説された。
続いて取り上げられた『魔笛』の序曲では、「フーガ」に着目し、その成立背景を理解した上で鑑賞することで、楽曲のもつ「娯楽性」やモーツァルトのある種の「音楽的なシャレ」を理解できるのではと解説がなされた。
対位法やフーガの解説に際し、加藤氏は作品を紐解く手立てとして楽譜を活用することに触れ、「楽譜が読めなくてもデザイン画だと思って見れば、旋律が混ざり合っていることが視覚的にも分かる」と語り、視覚的に理解することを手がかりとして鑑賞を深めていく方法等が提示された。

 

〇 研修2 作曲家が音楽に生命を宿した工夫について
-ボロディン 弦楽四重奏曲 第2番 ニ長調 第3楽章を例に

ここでは、ボロディンの弦楽四重奏曲を取り上げ、部分に分けて細かく分析的に解説をしながら、作曲家が音楽に生命を宿した工夫について解釈・解説がされた。チェロに与えられたシンコペーションのリズムが生み出す音楽の推進力、主題が引き継がれるタイミングにおける作曲家の意思、音を伸ばしている主旋律に対して内声を埋めるパートが動くことでもたらされる音楽的なうねりについて等、作曲家の加藤氏ならではの視点で解説がなされた。
解説で提示された視点は、鑑賞教材の分析に対してだけでなく、歌唱・器楽等の表現領域におけるアンサンブルの指導にも役立つ内容であった。

 

〇 研修3 楽器の特性について
-音域の違いによる音色の違い等

ラヴェルの『ボレロ』等の楽曲を引き合いに出しながら、弦楽器、木管楽器、金管楽器について、それぞれの楽器の音域と、音域の違いによってもたらされる音色の違いが解説された。

 

〇 研修4 ドビュッシー
弦楽四重奏曲 ト短調 作品10より第2楽章について

楽器の特徴に対する理解を深めた上で、ドビュッシーの弦楽四重奏曲が取り上げられた。ここでは、ピッツィカートとアルコの奏法に焦点をあて、奏法の違いによって、音色の違いだけでなく拍感や音楽性にどのように違いが生み出されているのか等が解説された。

 

〇 研修5 シューマン
ピアノ五重奏曲 変ホ長調 作品44から最終楽章について

最後に、シューマンのピアノ五重奏曲が取り上げられた。ピアノ五重奏という編成について、加藤氏は「弦楽四重奏対ピアノという構図にもできるし、5つのパート全てで構築する音楽にもできる」とその魅力を語りながら、「室内楽の場合は、個々のパートの動きが重要で、その個々が動くことによってそれぞれが合わさって一期一会の音楽が生まれる」と室内楽作品の面白さとその聴きどころが解説された。

 

〇 質疑応答・まとめ

以下の3点で質疑応答が行われた。
・音楽を語る言葉の引き出しを増やすにはどうしたらよいか。
・教材研究・分析(アナリーゼ)をする際に、楽譜から何を抽出し、どこに注目すればよいのか。
そのポイントをどのように見出せばよいのか。
・対位法やフーガ等の分析に役立つ文献について。

 

■受講者からの感想(アンケートより抜粋)

・自分自身がどのように楽曲分析をしていけば良いのかがよく理解できた。自分が十分に理解した上で、たくさんある知識や情報の中から、生徒に何を伝えるのかを絞り込んでいくと、奥行きのある授業が構築できるのかな…と感じた。

・鑑賞の授業において、生徒の知的好奇心をくすぐるような教員側の発問や言語表現の豊かさが必要であり、鑑賞する前に教員自身が音楽を形作っている要素への理解やさまざまな知識の充実が不可欠であると感じた。また、鑑賞をする際に楽器の歴史や、音楽形態について、また作曲家の生きた時代や流行りなどの情報を学習した上で鑑賞させるとより豊かな観賞活動に繋がると思った。

・対位法で作られている作品、何気なく組み込まれている作品を紹介いただき、生徒の気分で鑑賞し感動できました。フーガの対唱を知り、楽譜で見つけた時はとても嬉しい気持ちになりました。こんな授業をしたいと思います。

・鑑賞の理解が深まる(音楽の仕組みが分かる)ことで、聴く楽しさや喜びが増し、生涯音楽を愛好するようになります。そのために授業をどう展開するか教えていただきました。加藤先生もおっしゃっていましたが、楽譜が読めなくても提示することで音の動きが分かり、新たな発見をしたり、楽譜に興味を持つ生徒も出てくると思います。また、音楽の仕組みを勉強する上では、演奏動画と併せて楽譜の提示がありとてもありがたかったです。

・作曲家による楽曲のアナリーゼを拝聴し、これまで以上に鑑賞のポイントについて知識が増えた。また楽曲のタイプによって、アプローチの角度を工夫できる点も参考になった。

・今回用いられた曲から、表現領域の学習にどのようにつなげたらいいのかについて具体的な説明があり、大変参考になった。領域を関わらせた題材構想の魅力について、改めて考えることができる機会となった。

・加藤先生の言葉を聞いていて、(音楽を表現する言葉について)教師が使う言葉を生徒は使うことを改めて考えさせられた。見えるもの(例えば楽譜)は聞こえるし、しっくりくる言葉の表現があれば、それも感受できるのではないか。すべてを言葉で表現できるわけではないが、自身の表現力を高めたい。

 

 

実施スケジュール

時間 内容 研修形態(方法)
13:00〜13:05 挨拶・講師紹介
研修前の操作確認・オリエンテーション
リアルタイム
13:05〜13:40 研修① 作品を聴く視点について
-『G線上のアリア』『魔笛』を例に
リアルタイム/
動画視聴
13:40〜14:15 研修② 作曲家が音楽に生命を宿した工夫について
-ボロディン 弦楽四重奏曲 第2番 ニ長調 第3楽章を例に
リアルタイム/
動画視聴
14:15〜14:30 休憩
14:30〜15:00 研修③ 楽器の特性について
-音域の違いによる音色の違い等
リアルタイム/
動画視聴
15:00〜15:25 研修④ ドビュッシー
弦楽四重奏曲 ト短調 作品10より第2楽章について
リアルタイム/
動画視聴
15:25〜15:50 研修⑤ シューマン
ピアノ五重奏曲 変ホ長調 作品44から最終楽章について
リアルタイム/
動画視聴
15:50〜16:00 質疑応答・まとめ リアルタイム
16:00〜16:10 休憩・移動
16:00〜16:30 全体講評 リアルタイム