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令和5年度 全国研修会レポート [テーマ別実践研修]
中学校音楽科・高等学校芸術科 (音楽) [中高音4]:実施担当 東京藝術大学

研修概要

日程:令和6年2月16日(金)
講師:山本耕平(声楽家・テノール)・  高橋維(声楽家・ソプラノ)・  前田拓郎(ピアニスト)
受講者数:45名(定員  50名)

テーマ

各国の歌曲の特徴を捉え、歌唱表現を創意工夫しよう!

 

研修会の内容

本研修は、オペラ歌手の山本耕平氏、高橋唯氏を講師に迎えて、教科書で扱われることが多い歌曲を教材とし、それぞれの特徴などを捉えながら、歌唱表現を工夫することを目的に実施された。両氏による歌唱指導を通じて、曲にふさわしい発声や言葉の発音、曲の解釈、自己のイメージの豊かなもち方などについて学び、新しい視点の発見や授業改善につながる具体的な方法を探究した。さらに伴奏者(共演者)の視点で、前田拓郎氏によるピアノ伴奏の指導も行われた。

 

午前中の研修にて、受講生とともに発声準備を行った。プロの歌手が朝起きてからいかに体を起こし、体を楽器として鳴らせるように準備していくのか、さらに短い準備時間しかない場合にどのように体を起こすのかについて実際にストレッチをしながら説明がなされた。喉の声帯の周りの筋肉を動かして声を出すという体の仕組みを理解し、首、肩のほぐし方、そして時間があるときには股関節、頭皮に至るまで体全体を動かす方法が伝えられた。

ストレッチに続き、「呼吸」へのアプローチの仕方に移ると、腹式呼吸の仕組みについて説明があり、息の吸った時、吐いた時の体の動かし方を実践した。肋骨の一番下の骨部分を膨らませ、すぼめるという動きを一定の拍に合わせて行った。

さらに体を楽器として鳴らす時に「姿勢」が重要であるという話があり、歌う姿勢にするための一つの方法として「ロールアップ」法が紹介された。体に一本のポールがあり、そこを真っ直ぐに空気が通るイメージが伝えられ、決して体に力が入らないように、そして体が硬くならないように注意があった。

体をほぐし、呼吸と姿勢を確認した状態をニュートラルとして、歌唱ではさまざまな表現がある中で、そこに戻ってくるように意識することが重要であるという説明があった。

続いて、歌声を作る発声法に移った。発声のポイントとして、①軟口蓋、②首の2点を挙げ、軟口蓋では「んが」「いえ」を発声し無駄のない音の発し方を、首では「ず」を発声し楽器としての器の作り方を説いた。

以上の午前中の研修は、プロの歌手が取り組む準備方法であったが、授業の歌唱指導の際に1時間目などすぐには生徒の声が出しづらい状況などの時にも取り入れることができる実践的な内容であった。体の仕組みについて丁寧に説明があり、さらにすぐに講師による見本を見ることができたため、受講生が体を動かしながら何度も試して発声に取り組む様子が見られた。

午後に入ると、「オー・ソレ・ミヨ」「アメージング・グレース」「誰も寝てはならぬ」「野ばら」「この道」を取り上げ、個々の作品の歌唱実践を通じて発声、及び発音方法、そして音楽表現を学んだ。

まず「オー・ソレ・ミヨ」(イタリア語)では、基本となる姿勢や呼吸を確認するため、①「ん」のみで歌う、②母音のみで歌う、あるいは③「んがんげんご」のみで歌う方法が提示された。そして歌唱時に首を安定するため、④「ず」のみで歌う、⑤「ザゼズィザゾ」のみで歌う方法を練習した。これら5つの歌唱方法を用いながら数度にわたり「オー・ソレ・ミヨ」を通して歌い、基本の姿勢で発声し、基本の状態に立ち返る重要性を確認した。さらに地声と裏声に切り替わる「換声区(点)」の歌い方が示された。

「アメージング・グレース」(英語)では、音楽表現を主にした歌唱法の説明がなされた。母音唱で歌い、スラーがついている「あ→え」の移行方法を練習した。3連符を大切に歌うことや、歌詞の中で大切な言葉を強調して歌うことなどの注意がなされた。

           

「誰も寝てはならぬ」(イタリア語)では、最初にオペラの物語と歌詞の意味の解説があり、作品の特徴を把握した。プッチーニの作品では、音の揺らぎに特徴があり、作品成立の時代には歌手が自由に表現することが多かったという時代背景を踏まえた説明があった。

「野ばら」(ドイツ語)は、ドイツ語の歌詞の意味を確認し、ドイツ語特有の「ウムラウト」の発音方法などが説明された。

日本語の歌曲については、「か→KA」とローマ字に変換し、「子音と母音に分解する」ことで丁寧な発声に繋げることの重要性を説いた。さらに音が跳躍する箇所について、具体的な練習方法を紹介しながら、違和感なく低音から高音を発声する方法が示された。

午後の研修は、作品ごとに講師による見本歌唱があり、さらに適宜質疑応答があり、プロの歌手ならではの専門知識、技術に裏打ちされた内容ながら、受講生の希望に丁寧に寄り添ったもので、受講生がみるみるうちに良い歌唱方法を身につけ学びを深める様子が伺えた。

                 

 

実施スケジュール

時間 内容 研修形態(方法)
9:30〜9:45 開講式 参集(DVD視聴)
9:45〜11:00 理論研修 参集
11:00〜11:15 佐野靖教授オリエンテーション
山本耕平氏、高橋維氏、前田拓郎氏紹介
11:15〜12:00 発声準備
12:00〜13:00 昼食休憩
13:00〜13:55 「オー・ソレ・ミヨ」歌唱実践指導
13:55〜14:00 休憩
14:00〜14:25 「アメージング・グレース」歌唱実践指導
14:25〜14:35 休憩
14:35〜15:45 「誰も寝てはならぬ」「野ばら」歌唱実践指導
15:45〜15:55 休憩
15:55〜16:30 「この道」歌唱実践指導
16:30〜16:50 教科調査官による全体講評