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令和5年度 全国研修会レポート [テーマ別実践研修]
中学校音楽科・高等学校芸術科 (音楽) [中高音1]:実施担当 東京藝術大学

研修概要

日程:令和5年12月11日(月)
講師:千住明(作曲家・東京藝術大学)・  佐野靖 ・  杉山陽介(東京藝術大学)
受講者数:41名(定員  40名)

テーマ

多様なアプローチから創作表現を創意工夫して楽しもう!

 

研修会の内容

本研修は、昨年「音楽鑑賞」について講義を行った千住明客員教授を講師に迎えて、クラシック音楽からポップス音楽までさまざまな音楽に精通する千住氏からの情報提供を受けて、創作の新しい視点の発見や授業改善につながる具体的な方法を探求する目的で実施された。
大きな流れとしては下記の通りである。どのように作曲家の道を志すに至ったのかといった千住氏による自己紹介に始まり、基本的な和声(コード)の性質について説明がなされた。続いて、千住氏によって提示された課題を受講者全員に創作に取り組み、その作品を全員の前で発表し、千住氏による講評がつけられた。その後、杉山氏によりデジタルツールを使った創作について、iPadのGarageBandを例に講義が行われた。

まず、千住氏がG7→Cのコード進行についてピアノを弾きながら説明した。シからドに解決するという音の流れを人間の心理と結びつけて説き、このような音楽の規則を知っておくと作曲する時間が早くなるという話があった。
具体的に山下達郎氏「クリスマス・イブ」を例にとり、サビのコード進行を示した。ポップスでコードをつけるとさらに複雑になること、そして異なる音を追加することでJAZZのコードになることを実際にピアノを弾きながら説明した。
さらに千住氏が携わった過去のワークショップの事例を紹介し、「作曲経験のない人に作品を作ってもらう」という企画でうまれた作品の楽譜と音源が共有され、作品として成立するためのポイントが示された。

午後は、C→G/B→Am→Em/G→F→C/E→Dm7→G7のコードにのせたメロディをつけるという創作に取り組んだ。「翼をください」などで用いられ、作品としてまとめやすいコードであるため、創作に慣れていない受講生はこのコードを参考にし、あるいはこのコード以外でも創作が可能という受講生は自分の課題を設定する形で、各々が作品作りを行った。30分間の制作時間を経て、参加者全員が作品を発表した。

      
          

短時間ながら受講者の思いやこだわりが感じられる作品が多く発表され、千住氏より創作を通じて個性を出す大切さについて話があり、千住氏による講義が締めくくられた。

                

質疑応答

質問:生徒に作曲をさせる場合、手がかりがないと難しい。ソナタ形式など条件を与えると可能になる場合がある。千住先生はそれについてどう思うか。
千住氏:ソナタはABAの構造をとっていて、ポップスであればABC、AABCとなる。ハーモニー(和声)もそうであるように、ソナタをグラマーとして教えてあげるのは良い。授業で生徒に伝えるときは、音を出してわかりやすく説明するとより良いだろう。

質問:授業で作曲をさせ、生徒が連続5度や連続8度を繰り返してしまった場合に、教師が修正すると教師の作品になってしまう。どのように指導するのが良いか。
千住氏:機能和声、対位法の場合は作品の中で目立つという理由で禁忌とされるが、ポップスでは許されることがある。しかしながら、基本を知っておく必要はある。それは専門家だけが知っておくというだけでもいいのかもしれない。ルールを知らなくてもいい作品を描ける可能性もある。どれだけその知識が必要なのかは難しいことである。

続いて杉山陽介氏によるDTMとDAWの講義が行われた。
音楽科でのICT活用はまだ過渡期にあり、各学校により状況が異なることから、それを踏まえた上でDTM、DAWについての概説がなされた。
実際の授業を想定して、iPadのGarageBandを使用して、C→F→G→Cのコードにメロディをつけてサウンドロゴを制作するという課題が提示された。杉山氏の丁寧な案内により、GarageBandの初歩的な打ち込み方法を学んだ。
そして授業での協働制作という設定で、ベートーヴェン第9のメロディーに、リズムツールを使って打楽器の音を追加するという、発展的な授業方法の提案があった。
さらにICTを活用することで、さまざまな創作活動に繋げることができるという幾つかの紹介があり、講義が締めくくられた。

 

 

実施スケジュール

時間 内容 研修形態(方法)
9:30〜11:00 開講式・理論研修 参集(DVD視聴
11:00〜11:05 佐野靖教授オリエンテーション 参集
11:05〜11:15 千住明氏自己紹介 参集
11:15〜12:00 和声(コード)講義 参集
12:00〜13:00 休憩 参集
13:00〜13:15 課題説明 参集
13:15〜13:45 課題:メロディ付け 参集
13:45〜15:15 作品発表 参集
15:15〜15:30 質疑応答 参集
15:40〜16:20 杉山陽介氏自己紹介  ・ DTM、DAW解説 参集
16:20~16:40 教科調査官による全体講評 参集
16:40~17:00 研修会感想記入 参集