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令和5年度 全国研修会レポート [テーマ別実践研修]
小学校音楽科 [小音2]:実施担当 エリザベト音楽大学

研修概要

日程:令和5年12月13日(水)
講師:川上 統(エリザベト音楽大学)・三宅悠太(作曲家・エリザベト音楽大学)
受講者数:50名(定員  50名)

テーマ

歌唱・合唱指導の要点とICTを利用した音楽づくりのヒント

 

研修会の内容

本研修は、「歌唱・合唱指導の要点とヒント(1)(2)」と「ICT機材を使用した音楽づくり(1)(2)」の2部構成である。

 

歌唱・合唱指導のヒント(1)(2): 講師・三宅悠太
楽曲の魅力を実感することを起点とした、子どもたちの主体的な表現を引き出すポイントについての講義を行った。昨年度の同講座では「音色の表現」をテーマに扱ったため、今年度はリズムや楽曲構造などへの視座を主軸とした。題材として小学校歌唱共通教材「うみ」・「夕やけこやけ」・「春がきた」・「ふじ山」・「もみじ」・「ふるさと」の6曲を取り上げ、各曲へのアプローチとして「絶品ポイント」(楽曲の魅力を実感する)と「演奏のポイント」(実感したことを演奏に生かす)という2つのポイントを設けた。
例えば「ふじ山」では前半に多用されている「付点四分音符+八分音符」のリズムに着目した。もしここが「四分音符+四分音符」のリズムであったらどのように音楽の実感や演奏が変わるだろうか…と、一度「もしそうでなかったら」を実際に演奏して体感・思考した後に楽譜通りに演奏してみることで、原曲のリズムの特徴や魅力がより意識化されイメージが豊かになり、主体的な表現が導かれていくというプロセスを実践的に学んだ。また、曲の山である「ふじは~」の前小節の和音はⅤ(ソシレ)であるが、もしここがⅠ(ドミソ)であったら…と、原曲と異なる和音で実際に演奏・実感するプロセスを挟んでから楽譜通りに演奏することで、Ⅴ(ソシレ)=ドミナントが持っている緊張感を意識化し、曲の山へ向かって高まるエネルギーを“表現したくなる”実践を行った。

「ふるさと」では、旋律の反復と変化に着目し、原曲では5~6小節目にかけて旋律が高音に開かれる「変化」がもたらされているが、もしこの部分が1~2小節目と同じ旋律(反復)であったらどのように音楽の実感や演奏が変わるだろうか…と、「ふじ山」で行ったケースと同様に「もしそうでなかったら」を経てから楽譜通りに演奏してみることで、原曲が内包する前半8小節のスケール感やドラマ性を実感し、作曲者がクレッシェンド・デクレッシェンドを用いて記譜している大らかなフレーズ感を“表現したくなる” 実践を行った。他の楽曲の演奏や鑑賞にも通ずる、音楽の原理的アプローチが全体的な主眼となった。

 

ICT機材を使用した音楽づくり(1)基本操作と理論   : 講師・川上 統

後半の「ICT機材を使用した音楽づくり」では、Chrome Music Lab Song MakerとGarageBandを実際に用いての研修を実施した。研修のテーマは、体感的にICT機材やアプリケーションを用いながら、その中で創作における理路の一端を体験してもらい、音楽における創作を身近に感じ学ぶことである。

主にChrome Music Lab Song Makerを用いての操作法から実際の音楽づくりへ至る方法の幾つかをリアルタイムで打ち込みながら提示した。方法としては絵を描くように自由に打ち込む方法を先に提示しつつ、その後に童謡等を用い、その一定のメロディやリズムパターンをシンプルな基軸として打ち込み、①音域をそこから離したところで対旋律をオリジナルで作る、②合わせるリズムを打ち込む、③元にしたメロディやリズムパターンに変更を加える、等のやり方で児童・生徒がある程度の制限の中からのディレクションを示し、実施しやすい創作の形を提示した。

 

ICT機材を使用した音楽づくり(2)実践ワークショップ、質疑応答

Chrome Music Lab Song Makerからの流れのままGarageBandを用いた研修に移行し、また各々の実践の時間を取り、最終的に何名かの教員の方の作成した作品を共有し、どのような工夫を行ったかの可視化が図られた。

小学校音楽においても既にChrome Music Lab Song Makerは使われている現場が多く、質疑応答においても様々なアイディアを授業に取り入れている教員の方が見受けられ、ICT機材の音楽づくりの使用自体が数年前よりも広まっていることが実感された。他方、使い方や可能な領域がシンプルであるが故に、これを用いて音楽づくりを実施する上での授業内での誘導の仕方に苦心している教員の方も多くみられた。

本研修が、創作へのシンプルな理路を示しつつ、教員同士の意見交換やアイディアの交換の場として、今後の授業計画の一助となる事ができたならば幸いである。

 

実施スケジュール

時間 内容 研修形態(方法)
9:00~9:30 受付 オンライン
9:30~10:45 開講式・理論研修  オンライン
10:45~11:00 休憩
11:00~12:00 テーマ別実践研修
歌唱・合唱指導の要点とヒント(1)低・中学年歌唱共通教材
オンライン
12:00~13:00 昼食
13:00〜13:50 歌唱・合唱指導の要点とヒント(2)中・高学年歌唱共通教材 オンライン
13:50~14:00 休憩
14:00~14:50 ICT機材を使用した音楽づくり(1)基本操作と理論 オンライン
15:00~16:30 ICT機材を使用した音楽づくり(2)実践ワークショップ、質疑応答 オンライン
16:40~17:00 調査官による全体講評  オンライン
17:00  アンケート提出後,研修終了  オンライン