日程:令和5年12月15日(金)
講師:阪野智啓・井手康人(愛知県立芸術大学)
受講者数:9名(定員 15名)
やまと絵技法から学ぶ技法と材料
やまと絵は金・銀・雲母を用いた光輝表現を主体とし、水墨画を最上とした大陸文化と一線を画していた。研修では、現代ではほとんど用いられていない「雲母」の技法と「金銀箔」による装飾についての座学と実技を併せて実施し、日本絵画の伝統技法と、表現と材料のつながりについて理解を深めることを目的とする。
専門知識と技術について、教員対象の解説と児童に向けての指導案を実践する。
[概要説明]やまと絵技法と材料に触れる
[座学]やまと絵と光輝表現について、スライドから作例を知る(鑑賞)
[座学]扱う材料の特徴を、スライドを用いて学ぶ(表現)
[伝統技法]雲母を和紙に塗る(表現)
[伝統技法]金箔・銀箔を貼る(表現)
[まとめ]自分のつくった作品に題名をつけ、鑑賞することを通して学習活動を振り返る。(鑑賞)
日本独自の絵画文化であるものの、注目度が低い「やまと絵」についての
知識と技法材料について理解を深め、児童でも再現可能な範囲での伝統技法を習得する。
●午前の部:やまと絵に用いる材料の解説とモノに触れる(演習)
日本絵画の歴史的な流れと、それに関わる材料についての概説を行い、
また同時に材料(モノ)に触れることによって、
材質感や重量感などの体験を通じた新たな感動を得る機会とした。
・やまと絵史の概説(大陸文化との融合と独自性への道筋)
・日本絵画に用いられた材料の紹介
・絵具と材質(材料科学との接触)
・絵具と文化(歴史との関わり)
材料の解説 モノに触れる
●午後の部①:雲母地の実践
平安時代から用いられてきたが、江戸時代になって衰微してしまった「雲母地」についての実践。雲母は実は身近な素材(化粧品や化学塗料)だが、あまりに軽い粒子から扱いが難しく、絵具としてはほとんど用いられなくなった。しかし淡く輝く素材としては魅力的であり、なにより中世以前では積極的に用いられた重要な素材。本学ではだれでも再現可能な技法開発に成功しており、その実践から雲母を用いることで、光輝材料としての魅力に触れることだけではなく、材料と科学、文化、歴史への関心も高まる。
①雲母を小麦粉澱粉糊で練る(糊地の歴史と技法)
②水で溶きながら適当な固さに調整(感覚)
③和紙に塗布(素材と技法の関係)
雲母を塗る
●午後の部②:金銀箔の実践
金箔、銀箔を絵画に用いることは、あらゆる技術を学んできた中国王朝文化ではほとんど行われなかった、わが国独特の文化のひとつ。単純に、金銀箔を用いることは大人でも興味を惹かれるため、感性の刺激にもなるだろう。金箔が優位な江戸時代の琳派を想起しがちだが、室町時代以前は金と銀は対等、あるいは銀が優位的な装飾が目立っていた。淡く輝く雲母地に、金箔と銀箔の2色だけで装飾を施し、中世の感覚を楽しむ。また10000分の1ミリまで打ち延ばすことのできる特殊な金属である「金」と「銀」の特性と、輝きの魅力も学ぶ。今回は専門の道具を用いたが、身近な道具で代用可能。
①雲母地を作る
②金銀箔を撒く(道具を使う、装飾する)
③乾く前に金銀箔を貼る(箔を触る、裂く、貼る)
箔の用い方の指導 箔を撒く、貼る
●午後の部③:題名を決める(発表とまとめ)
作成した作品に題名を決める。はじめからイメージがあったものや、あるいは箔を無造作に裂くことによってひらめいた装飾性など、個人によってさまざまな造形性が発揮される。課題を縛らないことによって、発想の道筋を多様化させる効果もあるだろう。また題名は、古代のやまと絵が和歌に依拠していたこともあるが、文字と作品を融合させることでより表現が際立つ効果も狙う。最後に発表していただき、他の人の作品や制作意図を伺い、先生方にも新たな気づきを得ていただくことを目標とした。
発表
時間 | 内容 | 研修形態(方法) |
9:00~9:30 | 受付 | |
9:30~10:45 | 開講式・理論研修 | 講義 |
11:00~12:00 | テーマ別実践研修(午前の部) ・やまと絵に用いる材料の解説とモノに触れる |
演習 |
13:00 〜13:30 | テーマ別実践研修(午後の部) ・実技内容についての解説 |
講義 |
13:30 〜14:20 | ① 雲母地の実践 実技 | 実技 |
14:30 〜15:40 | ② 金銀箔の実践 | 実技 |
15:50〜16:10 | ③ 題名を決める(発表とまとめ) | 発表 |
16:30〜17:00 | 全体講評(文化庁) | 口頭 |