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令和4年度 全国研修会レポート [テーマ別実践研修]
中学校音楽科・高等学校芸術科音楽 [中高音3]:実施担当 東京藝術大学

研修概要

日程:令和5年2月13日(月)
講師:西岡龍彦(東京藝術大学)、深水悠子(東京藝術大学)
受講者数:参集32名、オンライン35名(定員  参集30名、オンライン30名)

テーマ

「音楽とサウンドの創作技法」:
ICTで身近になった映像から発想する音楽とサウンド

 

研修会の内容

本研修では、ICT端末等を効果的に活用した音楽とサウンドの創作を通じて、ICT社会における音楽科授業の新しい視点や指導法を学ぶ内容とした。
講師に本校音楽環境創造科創設者の一人で、映像のための音楽制作においてアカデミックな指導では先駆的な存在である作曲家の西岡龍彦氏を迎え、創作の現場の話を交えた実践的な方法の提案実践を行った。

 

深水悠子特任講師より講師及びスタッフ紹介があり、講義のスケジュールを確認したのちに、事前に受講者向けに実施した「音楽科授業におけるICT活用の状況」に関するアンケート回答を元に、ICT活用の現状について全体で確認をした。生徒一人一人へのICT端末の貸与が進んでいる一方で、各校、各自治体により導入されている端末が異なる上、音楽室のネットワーク状況がまちまちであるという声があり、音楽科授業でのICT活用を取り巻く環境が過渡期にある状況が伺えた。

ここから西岡教授の講義に入り、自身の研究領域や音楽環境創造科創設、これまで携わってきた音楽制作の現場、そして映像に関わる現場の現状と最近の傾向についての説明がなされた。映像のための音楽にはいくつかの手法があり、一つは「コントラプンクト」(ドイツ語:対位法)と言われる戦後すぐに登場した手法で、殺害シーンにのどかなクラシック音楽を流すなど、映像と音楽を対照的にする手法、その他に初期のミッキーマウスのような映像と音楽が同期する手法などについて、映像と音楽の制作プロセスや、実際の映像や録音スタジオ図などの資料が示されながら、普段見ることのできない「現場」について解説がなされた。

そして講義の主旨となる「サウンドデザイン」に移り、「サウンドデザイン」には「効果音」(foley sound:出演者の情報や心理状況を表現)、「環境音」(背景や雰囲気)があり、それぞれ映像で果たしている役割、さらに制作方法について説明があった

西岡教授が「まず映像のための音楽を制作するのは、映像を解釈する必要がある」と説き、実際のCM映像を題材に、映像から何を解釈することができるのか示された。最初の画面における左右の対称性がもたらす「安定」と「緊張」、そして出演者同士の関係性が、最後の画面で全て解決していること、そしてピントの合っている対象から監督の意図を汲むことができること、そして出演者の衣装やその色から、身分や季節を知ることができることなど、簡素な映像にも関わらず多くの情報があることが示された。

以上の講義を踏まえて、アニメーション「八百万」(作:山内千江子)に音をつける制作に移った。「八百万」は道後温泉で行われた「道後オンセンナート」で発表された作品で、温泉が道後にもたらしたものを映像にしたものである。映像の構成を理解するために、映像のコンテンツをパートに分け、タイムコードをふり、それに応じて、まず鳥が飛び立つ箇所の録音を行った。コートやジャケットをマイクの前で振りかぶった衣擦れの音を録音し、音楽制作ソフト「ProTools」を使用しエフェクトをかけ、音のピッチの高低やリバーブの付け方により「鳥の翼の大きさ」や「鳥との距離」などの聞こえ方に違いが出ることを確認した。

次にピアノで短いフレーズを受講者に弾いてもらい演奏を録音した。西岡教授が「クラシック音楽が音のみと対峙するためボリュームが多い必要があるが、それと異なり、映像のための音楽は音を減らした方が良い」と強調し、そして仮に録音する場合も必ずしも演奏の上手な人を探す必要がないため授業などで取り入れやすいという指摘があった。またピアノも鍵盤以外に、鍵盤の底を下からマレットで叩くなど実践を交えてさまざまな音の録音の提案があり、それら録音した音を映像につけて通しで確認をした。

最後に講義のまとめがあり、サウンドデザインを授業に活用する上で、「音楽制作が苦手な生徒も取り組みやすい」という点を示し、さらに協働制作のしやすさ、目標設定がわかりやすいなどの利点が挙げられ、講義が締めくくられた。

●質疑応答
・(料理の)テレビ番組で合唱曲を使用していることについて
・衣擦れの音が鳥の羽ばたきに聞こえる、といったような、効果音の録音方法があれば教えて欲しい
・ブラウザ上で作業が可能な映像編集ソフトについて

 

 

実施スケジュール

時間 内容 研修形態(方法)
9:30~11:45 開講式、全体研修、理論研修(教科別:文化庁による進行) オンライン
13:00~13:20 オリエンテーション、及び事前アンケートを元に
ICTを活用した音楽科授業に関する現状について
参集及びオンライン
13:20~14:25 講義(1) 参集及びオンライン
14:25~14:35 休憩 参集及びオンライン
14:35~14:50 講義(2) 参集及びオンライン
14:50~15:45 映像のためのサウンドデザイン制作 参集及びオンライン
15:45~15:50 講義のまとめ 参集及びオンライン
15:50~16:00 質疑応答 参集及びオンライン
16:20~16:40 全体講評(教科別:文化庁による進行) オンライン