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令和6年度 全国研修会レポート [テーマ別実践研修]
小学校音楽科[小音3]:実施担当 東京藝術大学

研修概要

日程:令和6年12月9日(木)
講師:岩井智宏(桐蔭学園小学校教諭)・市川恵(東京藝術大学准教授)
受講者数:40名(定員 40名)

テーマ

系統性を見据えた音楽科の学習指導計画の工夫

研修会の内容

本研修では、音楽科における領域及び分野の系統性を見据えた授業づくりの課題や教材研究の方法を探究するとともに、講師による具体的な実践提案を体験することを通し、学習改善・指導改善に結びつく視点や方法を学ぶことを目的として実施された。
音楽授業を系統的に、また発展的に展開するためには綿密な指導計画が欠かせない。音楽科の指導計画には、6年間を見通した指導計画、年間指導計画、各題材の指導計画、各授業の指導計画などがあるが、いずれの学習指導計画においても題材などの内容や時間のまとまりを見通して、その中で育む資質・能力の育成に向けて、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善が重要である。
そこで本研修では、講師の年間指導計画を例として、講師による各学年の歌唱共通教材を教材とした歌唱活動を核とした実践提案を受講生一人一人が経験し、それを授業にどのように生かしていくかについて、各学校の実態と照らし合わせながら、教材選択、指導方法、活動設定等の視点から考えていった。
実践提案としては、1年生から4年生までの歌唱共通教材を用いて、実際に岩井講師が普段の授業で取り入れている音楽活動をとおして、各楽曲の教材性や、子どもの表現や音楽的思考を深めていく発問や伴奏や指揮等も含めた音楽的な働きかけについて考えていった。
以下に、2年生、3年生、4年生の具体的な実践提案を示す。

【2年生:かしのようすをおもいうかべながらうたいましょう】
・常時活動として〈きよしこの夜〉を歌い、高音の声遣いに気付く
・〈夕やけこやけ〉を歌い、8分休符の存在に気付く
・フレーズの大きさを手で示しながら、フレーズを感じて歌う
・歩きながら歌い、休符で近くの人と手を合わせる
・なぜやさしく手を合わせたのか理由を考え、曲想をつかむ
・「かねがなる」「かえりましょう」の高音をどのように歌うか、〈きよしこの夜〉の声遣いも思い出しながら考える
・1フレーズずつ1人で歌い、休符でフレーズを受け渡すように歌い合う
・徐々に複数人で歌い合う
・1番と2番で歌い方を変えたが、変えていないものかを考える

上図は、岩井講師が桐蔭学園小学校第2学年の授業において、子どもが〈ゆうやけこやけ〉の1番と2番の共通点と相違点について、ベン図にまとめたものである。受講生たちは、このようなシンキング・ツールの活用の仕方についても、実践例から具体的に学んでいった。

【3年生:せんりつのとくちょうをかんじとろう】
音楽の特徴を掴むきっかけとして、のばす音符を拠り所にする
・〈ふじ山〉をRuで歌い、白い音符があるところで立つ
・白い音符には、二分音符と付点二分音符があり、長さが違うことに気付く
・拍で歩きながら歌い、白い音符で近くの人と握手をする
・4つのフレーズとした時に、最も好きなフレーズで立って歌う
・選んだフレーズが好きな理由を言語化する
・自分が最も好きな歌詞が登場したフレーズで立って歌う
・選んだフレーズが好きな理由を言語化する
・フレーズの特徴を生かしながら、教室全体に広がって歌う
・曲の最後の終わり方を近くの人と意見交換をする

【4年生:せんりつの重なりを感じ取ろう】
・常時活動としてカノンを歌い、3度でハモる感覚を体験する
・〈もみじ〉の主旋律と副次的旋律の特徴に気付く
・バランスを考えながら、主旋律パートと副次的旋律パートで音を重ねる
・1拍前の休符で次の音をイメージし、「まつをいろどる」の「ま」の3度のハーモニーをアカペラで歌う
・音の重なり方が途中から変わっている理由をペアで考える
・教室全体に広がり、一人ひとりが響きを感じながら歌う

岩井講師からは、年間指導計画を把握し、各題材をつなぎながら子どもを育てていくこと、子ども同士が関わり合いながら、自身の学びをつなぎ合わせることが重要であることが繰り返し伝えられた。そのためには、常時活動の活用、ねらいの焦点化、教材研究の視点、創造的思考へと導いていくことの大切さが語られた。
また、音楽授業づくりにおいて教師が心掛けることとして次の5点の重要性が強調された。①言語活動に入る前に音楽を味わう時間をたっぷりと取ること、②体をとおして音楽の特徴を実感すること、③最初に作品に出会った時と学習の最後に歌った後には作品の感じ方が変わるような授業を目指すこと、④一人ではできない音楽を目指すこと、⑤常に子どもの歌声に耳を傾け、何を表現しようとしているのかを聞き取ろうとすること、である。
最後に、「本日の講義や実践提案を踏まえて,自分の授業にどのように生かしていきたいですか」という問いをもとにペアで意見交換を行なった。また、受講生からの講師へ「授業のなかで思考ツールはどのような場面で用いているか」という質問があり、岩井講師より、まずは子どもが十分に音楽活動を行い、それを言葉で表したいという思いが高まったところで思考を整理したり、振り返ったりする時に使用するようにしているとの回答があった。

実施スケジュール

時間 内容 研修形態(方法)
9:00~9:30 受付 参集
9:30〜10:45 開講式・理論研修
10:45~11:00 休憩・会場移動
11:00~12:00 テーマ別実践研修(午前の部)
・年間指導計画の重要性
・題材の系統をみつめよう
・常時活動「どんぐりさんのおうち」
参集
12:00~13:00 昼食
13:00〜13:50 実践から考える①
♪ひのまる
鍵盤ハーモニカ
参集
ペア・グループワーク
13:50~14:00 休憩
14:00~16:00 実践からから考える②
♪夕やけこやけ
♪ふじ山
♪もみじ
参集
ペア・グループワーク
16:00~16:30 岩井先生の授業分析 参集
16:30~16:40 ペアによるリフレクションと講師への質疑応答 ペアワーク
16:40~17:00 教科調査官による全体講評
17:00 アンケート提出後,研修終了