日程:令和6年12月13日(金)
講師:今井由喜(渋谷区立渋谷本町学園中学校)・市川恵(東京藝術大学)
受講者数:40名(定員 40名)
「創作」と「鑑賞」の相互関連を図った 授業づくりの探究
〈研修会の内容〉
本研修は,「創作」と「鑑賞」の相互の関連を図った学習展開を受講生一人一人が体験することを通して,学習改善,指導改善に結び付く視点や方法を学ぶことを目的に実施された。
■午前の講義にて、今井講師が渋谷区立渋谷本町学園中学校で実践した創作活動を教材として、受講生へ具体的な音楽づくりを提示した。それに沿って、受講生が5名程度のグループで創作に取り組み、発表を行った。具体的な実践提案を下記に示す。
・「こんにちは」
・「パタカラ」
・「シャ」を含む言葉
■午後の講義では、3つの創作活動に対して、今井講師が授業で参考鑑賞として扱った作品・動画を示すことで、生徒への音楽づくりにおける素材の活かし方、音楽構成の方法の働きかけについて検討した。下記に例として挙がった作品を示す。
鑑賞例:
「こんにちは」の課題で紹介する作品
・ヴォーカリズムA.I.(武満徹)
・Miniwanka (R. Murray Schafer)
声の作品
・巻上公一氏の演奏作品
声の作品、かつ構成を理解できる作品
・Change(Meredith Monk)
・世界地図のフーガ(E.トッホ)
以上の作品は、創作のための“参考鑑賞”とすることで、生徒が音楽づくりの際の気づきを促すものである。
創作と鑑賞が対等ではない一方で、「シャ」を含む言葉での音楽づくりに対しての「ケチャ」の参考鑑賞が、文化的背景までの理解につながる例として紹介された。
■「声を使った創作表現」について具体的な展開例が示された。
・クラス対抗「クラップラップバトル」
クラッピングラプソディ 第1番の2段分を、自由にラップ演奏し、その出来を競う。“声を出しながら音楽を作ること”への一歩としてラップを扱い、音楽づくりの土壌を作ることを目的に活動する。
・8拍の中に、自己紹介で、早口言葉で、詩で表現
・「パパママぼく、いぬネコぞう」を教材にした音楽づくり
詩がある作品に音楽をつける時は、歌詞に対してどう捉えるかが重要である。生徒に、言葉の抑揚に注目、言葉のイメージに注目して褒めてと発問する。
※例え同じ詩でも、同じ音楽になることはなく個性を出すことができる
参考例:「海」(TUBE前田亘輝氏作曲版)
■声を使った創作の新しい形として、河本洋一先生(札幌国際大学)制作のビートレカードを用いたグループワークに取り組み、カード(視覚)→音の方法を通じて個々の声を使った表現方法を探った。
(1)グループで、一人一枚のビートレカードのフォントに応じた声表現を組み合わせて音楽を作る。生徒へは、カードに書いてあるフォント感を大事にして声に出すように伝える。
(2)ビートレカードの音楽づくりで、ビートを加える。4拍でループさせることを条件にする。
質疑応答:
Q、参考鑑賞を入れる方法として、鑑賞→創作→鑑賞という流れで、最後に鑑賞を入れて、作曲家の意図を確認するといった方法を取ることはあるか。
A、それができたら理想だが、やっていない。創作の経験値を積み、違う創作の時に活きるという形でぐるぐると色々な経験をすることが重要。なお、参考鑑賞を挟むタイミングは作った後とは限らず、効果的なタイミングで入れる。
Q、創作で現代音楽を扱うハードルについて。
確かに武満徹のAIを聞いて、これが音楽かと悩む生徒もいる。一つの策として、発表の時に空いている先生を呼ぶことにしている。「子供たちってすごいですね」と先生たちの見方が変わる。
創作は、先生の経験がない。周りの先生の意識を変えることは重要である。
時間 | 内容 | 研修形態(方法) |
9:00~9:30 | 受付 | |
9:30〜9:45 | 開講式 | DVD視聴 |
9:45〜10:15 | 理論研修 | |
10:30〜12:00 | 「創作」と「鑑賞」の相互の関連を図った音楽づくり実践(1) ・「こんにちは」「パタカラ」「しゃ」を使った創作 |
グループワーク |
12:00~13:00 | 昼食 | |
13:00〜14:55 | 「創作」と「鑑賞」の相互の関連を図った音楽づくり実践(2) ・参考鑑賞について ・声を使った音楽づくり |
講義 |
14:55〜15:10 | 休憩 | |
15:10〜16:00 | 「創作」と「鑑賞」の相互の関連を図った音楽づくり実践(3) ・「ビートレカード」を使ったグループワーク発表 |
グループワーク |
16:00〜16:30 | 今井先生の授業分析 | 講義 |
16:30〜17:00 | 質疑応答 |