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令和2年度 全国オンライン研修会レポート [テーマ別実践研修]
中学校音楽・高等学校芸術科音楽:実施担当 東京藝術大学

研修概要

日程:令和2年12月3日(木)
講師:アベタカヒロ(作曲家)、佐野靖(東京藝術大学)
受講者数:76名(定員40名)

テーマ

創作の実践と授業研究を通して創作授業の新たな視点や方法を探究する

 

研修会の内容

本研修では、新型コロナウイルスの影響により、従来通りの方法では歌唱や器楽の実践が厳しく、様々な試行錯誤が続いている学校現場の状況を鑑み、創作領域に焦点をあて、実践例をあげながら創作指導の可能性と課題について提案・実践を行なった。講師には第一線で活躍する作曲家を迎え、受講生一人一人が様々な方法で創作を体験することを通して、授業の工夫と改善に結び付くアイディアや方法を学ぶ内容とした。

 

研修①:講師による創作の授業実践例に学ぶ/作曲家による授業実践

研修①では、作曲家アベタカヒロ氏による中学校での創作授業の実践事例が紹介された。アベ氏は、作曲家としての自身の経験も交えながら「創作することは、表現することである」と度々語り、実践では生徒自身が表現したい思い、伝えたいイメージをもつことを大切にしたと述べた。伝えたいメッセージを決めてから創作を始めることによって、生徒が創作の活動を行うきっかけ・モチベーションとなること、また、伝えたい思い・イメージがあることで、コードトーン等の決められた範囲から音を選択する際にも生徒の思いが投影されることが解説された。

 

研修②: 創作指導の方法の提案と実践

研修②では、研修①でアベ氏が行なった2つの創作実践に受講生自身が取り組んだ。1つ目に取り上げられた「自分の名前」をテーマとした「言葉からのアプローチ」は、最初にリズムを、次に言葉のイントネーション(発音の上がり下がり)をもとにした音の動きを、というように要素に分けて音楽の断片をつくり、最終的に組み合わせて旋律を創作する事例である。2つ目の事例は、伝えたいメッセージを設定した上で、決められたコード進行の和音構成音より音を選び、旋律を創作する「コード進行からのアプローチ」である。創作時のポイントとして、1)言葉の抑揚を考える、2)小節のつなぎ目が自然であるかどうか、3)全体に音楽的な起伏があるかどうか、を確認しながら創作することがアベ氏より提示された。

創作実践の後、受講者による作品発表を行なった。受講者のつくった作品をアベ氏が分析的に取り上げ、メロディーの稜線、リズムと言葉の関わり、方言のイントネーションが生み出す面白さ等を拾い上げ、解説しながら、ハーモニー付けをして伴奏した。

 

まとめ:創作指導の可能性と課題/質疑応答とまとめ

最後に、研修①で取り上げた創作授業の実践における中学生の作品および記述が紹介され、実際の授業で生かせる視点や方法、授業改善へ向けた工夫とアイディア等が意見交換された。

本研修では、受講者それぞれが創作に関する知識や技能を得たり生かしたりしながら、自分なりに創作表現を工夫すること、そして、授業改善に向けて、創作の指導法や学習内容に生かせる視点と方法を考察することを目的とした。
受講者アンケートの感想からは、創作実践例を体験することを通して、創作の面白さや奥深さ、作品ができ上がった際の達成感や喜び、そして、思いを音にすることの難しさを体感し、受講者である教師自身が創作すること自体と深く向き合う経験となったことが伺える。アベ氏は、創作において「頭で考えすぎず、指で探って、自分の感性にぴったりくる音を探す」ことが大切であり、作品を取り上げる際には「どこかにいい点がある、というスタンスで楽譜を探ってほしい」と述べた。楽譜からつくり手のこだわりや意図を拾い上げようとするアベ氏の姿勢や、メロディーのよさ・面白さを捉える視点、ハーモニー付けのコツ等は、受講者にとって創作指導の工夫と授業改善につながる内容であったに違いない。生徒の自由で豊かな発想を教師が拾い上げ、いかに支援していくのか、その具体について考える契機となった点でも、本研修会の成果であると言える。

 

実施スケジュール

時間 内容 研修形態(方法)
13:00〜13:10 研修前の操作確認・オリエンテーション リアルタイム
13:10〜13:40 講師による創作の授業実践例に学ぶ(研修①-1) リアルタイム
13:40〜14:10 作曲家による授業実践(研修①-2) 動画視聴
14:10〜14:25 休憩
14:25〜14:45 創作指導の方法の提案と実践

「言葉からのアプローチ」(研修②-1)

リアルタイム

各自作業

14:45〜15:00 作品の発表と評価 リアルタイム
15:00〜15:20 創作指導の方法の提案と実践

「コード進行からのアプローチ」(研修②-2)

リアルタイム

各自作業

15:20〜15:40 作品の発表と評価 リアルタイム
15:40〜16:00 創作指導の可能性と課題 質疑応答とまとめ リアルタイム