日程:第1回 令和2年12月3日(木)、第2回 令和3年2月22日(月)
講師:石上則子(日本女子大学非常勤講師 当時)、市川 恵(早稲田大学教育・総合科学学術院講師 当時)
受講者数:第1回 64名、第2回 59名(定員 各40名)
音楽づくりの実践と授業研究を通して音楽づくりの新たな指導法、授業展開の視点や方法を探究する
本研修は、音楽科授業を実践されている小学校の教員が対象であったため、コロナ禍であるという現状を踏まえ、声や共有する楽器を使わずに音楽づくりを進められるボデイパーカッションやそれに準じる民族楽器を使った内容に焦点を当て、実技演習を交えた講習と実践事例の紹介並びに解説等を行った。
(1)音楽づくりの実践提案と実技演習
〇ボディパーカッションによる常時活動例等の提示
〜リズムあそび、即興的な表現からアンサンブルづくりへ
常時的に扱うことができるリズムあそびとして、「拍のリレー、穴埋め」「フレーズの伸長」など、2人の講師の実演を交えたり、参加者に実演していただいたりしながら紹介した。また、一人でつくるリズムパターンや、一人で一つの音を出す「トンガトン(フィリピンの民族楽器、長さの異なる竹筒)」によるリズムアンサンブルを、実際にリズムを打ちながら示した。
〇リズムパターンづくりの実技演習と発表
参加者一人一人に、提示したリズムパターンと同じ構造でリズムを変えてつくっていただき、それを数名の方に発表していただいた。児童の発達段階に応じて、使う音符等を指定する場合があるが、ここでは、個々人の発想からリズムをつくるようにした。右図は、提示したリズムと発表例である。
(2)音楽づくりの実践事例の紹介と解説
本年度、実践された3つの音楽づくりの授業について、動画を使って紹介と解説を行った。
①上野原市立秋山小学校第3学年 (和智宏樹 主任教諭)
(1)の実技演習を行ったリズムパターンで音楽づくりを実施した事例である。本事例では、常時的な活動にて拍のリレー等を行っている授業風景も紹介し、それがつくる活動の原動力となっている点にも解説を加えた。一人一人がつくることを重視し、児童が取り組みやすい記譜の仕方にも工夫が見られた。
②立川市立第三小学校第4学年 (半野田恵 指導教諭)
(1)で紹介した「トンガトン」を使い、音の探索を十分に行いながら一人でつくったインターロッキングのリズムを友達(4人組)と協働してまとまりのあるリズムアンサンブルをつくっていく学習である。ここでは、「トンガトン」の魅力を児童一人一人が十分に感じ取り、その音色を楽しみながら音楽づくりを進めていく姿について解説した。
③所沢市立林小学校第4学年(佐藤幸子 主任教諭)
鑑賞教材や器楽教材から学んだ呼びかけとこたえを活用して、2声のリズムアンサンブルを一人でつくり、各自が教師と合わせて発表を行う授業風景である。児童が、教師の示した条件を越えて発想を膨らませながらより豊かなリズム表現を生み出していく姿を捉えた。
(3)音楽づくりの評価、紹介事例と教科書掲載事例との関わり
事例③の実践者は、本研修会に参加されていたため、この事例について感じていたことを述べていただいた。また、事例②の「トンガトン」については、他学年で実践された参加者がいらしたので発言を求めたところ、学年によっての違いについて語られた。
①音楽づくりの評価
音楽づくりの評価が難しいという意見を受けて、本年度より完全実施された学習指導要領に基づく評価について事例①を取り上げ評価規準の実際について触れ、とくに、思考・判断・表現において評価する児童の思考過程において、様々な対話の重要性や思考を促す手立ての必要性について述べた。
②紹介事例と教書掲載事例との関わり
ここで示した事例は、教科書に示された内容を充実、発展させたものであるため、2社の教科書ではどのように扱われているのかについて触れた。それが次に示す中学校の事例にもつながっていることを確認した。
(4)中学校における創作の実践事例の紹介と教室談話の分析
中学校での現状を知っておくことは小学校高学年の授業の在り方を考える上で参考になる。そこで、学びの連続性を踏まえて講師陣とともに研究を進めてきた中学校の事例(渋谷区立上原中学校 第1学年 今井由喜 教諭)を紹介した。生徒のグループ活動における談話を中心に分析し、創作活動が、言語だけでなく、多様な対話に支えられているかについて明らかにした。また、小学校の事例①で扱われたリズムをもとにしたり器楽教材の構造をもとにリズムアンサンブルをつくっていたりすることも示され、小学校の学びが中学校でさらに深まっていく姿を提示した。
(5)グループディスカッション、質疑応答、音楽づくりの進め方、可能性と課題
①グループディスカッションと質疑応答
ブレイクアウトルームの機能を活用し、4人ずつのグループをアットランダムにつくり、普段の音楽づくりの様子や本日の研修で学べたこと等についてディスカッションをしていただいた。講師が3〜4組のグループへ入り話を聞かせてもらったが、10分程度の時間時間にも拘らず、どのグループもとても活発に意見交換をしていた。意見をまとめて、1〜2のグループに話の内容を全体に共有するようにし、講師からコメントをした。
②音楽づくりの進め方、可能性と課題
研修のまとめに、音楽づくりをどのように進めると効果的であるかについて触れ、学習科学の視点より音楽づくりの可能性を述べてくださった益川弘如氏(聖心女子大学)の言葉を紹介した。音楽づくりでは、着地点が見えないことに不安を覚え、実施できないことが大きな課題となっていると考えられるため、こうした研修会の重要性を再確認した研修会となった。
時間 | 内容 | 研修形態(方法) |
13:00〜13:07 | オリエンテーション(講師自己紹介、本日のタイムスケジュール等)Web会議システム等の操作確認 | リアルタイム
資料提示 |
13:07〜13:50 | 音楽づくりの実践提案と実技演習
・ボデイパーカッションによる常時活動例等の提示 ・リズムパターンづくりの実技演習、数名の発表 |
リアルタイム
資料提示 |
13:50〜14:40 | 音楽づくりの実践事例の紹介と解説
・3校の授業(抜粋)の視聴とポイントの解説 |
動画視聴とリアルタイムでの解説 |
14:40〜14:55 | 音楽づくりの評価
紹介事例と教科書掲載事例との関わり |
リアルタイム
資料提示 |
14:55〜15:10 | 休憩 | |
15:10〜15:40 | 中学校における創作の実践事例の紹介と教室談話の分析 | 動画視聴とリアルタイムでの解説 |
15:40〜15:50 | グループデイスカッション
・日常の音楽づくりと本研修の内容について |
ブレイクアウトルーム |
15:50〜16:05 | 質疑応答
音楽づくりの進め方、可能性と課題 |
リアルタイム |
16:05〜16:10 | 休憩、ルーム移動 | |
16:10〜16:30 | 全体講評 | リアルタイム |